※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 突然鳴り始めた聞き慣れた着信音に、岬は首を傾げた。定時連絡には1時間早い。 「若林くん、どうしたの、急に?」
「急にすまないな。少し気になって」 急いでいる様子がないだけでも安心しつつ、不思議になって尋ねる岬に、若林は岬のよく知る曲のタイトルを挙げた。 「って知ってるか?通販で岬のグッズを買ったら、関連商品に上がっててな」 携帯電話のマイク越しでもドキドキしてしまうような美声で言うことがそれか、と岬はため息混じりに答える。 「友達が作ってくれた曲なんだ」 「そうなのか?」 ごく簡単な答えに納得がいかないのか聞き返す若林に、岬は諦めて話し始める。 「東京の小学校の同級生でね。僕は知らなかったけど、歌手になったらしくて」 岬の方も全く気がついていなかった。 「そうなのか?」 「うん。一緒のクラスにいたのは一ヶ月位だったし、一緒に遊んだこともなかったし、あんまりサッカーにも興味がなかったらしくて」 その代わり、リコーダ-ではクラスでもうまい方で、岬と男子トップの座を争っていた。 「なるほどな」 「それが、最近僕の試合を見て感動したから、曲を作ったって連絡くれたんだ」 その曲を岬が公認する形で発売されたため、公式の応援歌となっている。元々女性人気はあったが、岬を応援する今回の新曲は話題を呼び、その歌詞は幅広い層からの支持を集めた。 「それで、か・・・」 サッカー仲間で岬の努力を知らぬ者はいない。復帰してからの試合は、一試合一試合が、岬の覚悟を物語るようだとさえ評される。 「サッカーに関心ないって聞いていたのに、感動したって言ってくれて、本当に嬉しいよ」 岬は苦労を語ることはない。それは若林に対しても同じである。それでも、明るい曲調で語られる決意の固さや不屈の意志、それに隠れた弱さもよく知っている。 「まるで凱歌だな」 「凱歌?」 耳慣れない単語に、若林の言葉をなぞって、岬は聞き返した。 「勝利の歌、の凱歌な。サッカーに興味のなかった奴までが喝采して来るんだからな」 若い頃から、ドイツに住む若林にとって、日本でのサッカー人気のあり方は不思議でならない。ワールドカップやオリンピックの度に盛り上がるものの、すぐに静かになる、熱しやすく消えやすい炎。それだけに、日本で広く支持される岬の人気は、岬がある意味勝ったと言っても過言ではないはずだ。 「まだ、だよ。まだ何も始まってないもの」 超人的な努力の甲斐あって、奇跡的な復帰を遂げても、それしか認められないなら、何も変わらない。 「そういうメッセージに聞こえたよ。もっと頑張らないとね」
静かに話す岬の中の炎がどれだけ激しく燃え続けているものか若林は知っている。お互いに消えることのない火を、知っている。その岬を支えるものは多い方が良い。若林はその曲の購入を決めた。
その数か月後、合宿所で松山と若林の鼻歌が同じ曲でかぶるという喜劇が起こることを、まだ誰も知らない。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 今年スポーツで活躍された方や引退された方のことを考えているうちに、こんな話になりました。 まとまりきってはいませんが・・・。
今年も一年間本当にお世話になりました。 今年はきちんと定期的に更新できたので、自分としてはとても頑張ったと思っています。(あくまで自分としては、ですが) 来年もどうぞよろしくお願いいたします。 では、良いお年を。
真
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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