※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「じゃあ、後で。いってらっしゃい」 玄関先まで若林くんを見送った。今日は若林くんのチームの試合の日。若林くんの試合を観るのは久しぶりだから、こっちに着いた時から、いやチケットをもらった時から、興奮が収まらない。 「?」 若林くんは靴を履き掛け、それから立ち止まった。ゆっくり振り返ると、シューズボックスの上に、手を乗せた。それも僕の右手の上に。思わず見上げると、じっとこちらを見つめる若林くんとまともに目が合った。 「な、何?」 やましいことなんか何もないのに、そんなに見つめられたら、少し腰が引ける。初めて見た時から変わらない、心の中まで届くような視線に射すくめられて、僕は思わず言葉に詰まった。 「岬」 手を押さえられていては逃げられない。せめて左肩を傾けて逸らそうとした目線を追うように合わされた。逃れようとした壁際に追い詰められて、耳元に囁きが落とされる。 「いってらっしゃいのキスは?」 「はあッ!?」 若林くんは笑っていた。それはそれはだらしなく。 ゴールマウスに立つ若林くんを知っている。最初は敵として出会って、何としてもゴールを奪いたいと思った。その後はずっと味方だった。どれほどすごいプレーヤーか知っている。どれほど強い人か知っている。そこにいるだけで、独特の空気をまとい、守られている背中をこれほど心強くおもったことはなかった。 「いやだよ。試合なんだから、気を引き締めないと」 その凛々しさの印象も薄れるほど相好を崩して、若林くんは笑っている。 「岬がキスしてくれたら、もっと頑張れると思わないか?」 「思わない」 拒む言葉もつい甘くなった。戦っている時の若林くんは本当にかっこいい。目を閉じてもその姿がありありと思い浮かぶ位、印象が強い。それなのに、二人でいる時に甘えて来る若林くんも、やっぱり好きなんだ。昨日今日の間柄じゃない。生まれて初めての、たぶん一生に一度の、僕の恋の相手。 「でも、頑張れ」 頑張ってほしい。僕は応援しかできないから、独り戦う君を精一杯応援するから。僕は少しだけ背伸びをして、頬に軽くキスをした。 「岬ィ!!」 「もうっ、ストップ、ストップ!ほら、早く行かないと!!」 そのまま抱きつこうとした若林くんをさっさと追い出して、僕は閉めたドアに額を当てた。早く試合を観に行きたい気持ちと、追い付いて来た恥ずかしさが胸の中で暴れて、しばらく動けそうになかった。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 何となく、いってらっしゃいのキスの話が書きたくなって、急に書きました。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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