fc2ブログ
今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
秋雨
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。


 違和感があって、目を覚ました。すぐにベッドの中を探り、違和感の正体を知る。
 昨日腕の中に閉じ込めたはずの岬がいない。
 元々岬は寝相が良い。こう肌寒い気候だと尚更だった。いつもなら、裸のまま抱き締めようとすると抵抗するのが、寒い時期だけはむしろ裸の腕の体温を慕うように、ぴったりとくっついてくる。

 サイドライトだけの薄暗い部屋で目を凝らし、いないことを確かめてから身を起こした。
 幸い寒さには鈍い方だ。それでもベッドから出ると、途端に体温が奪われるような冷気を感じた。近くに置いていたパーカーを羽織り、スリッパを履く。窓の向こうでは、夕方から降り出した雨が絶え間なく音を立てている。そう騒がしくないだけに、かえって寒々しい気がして、パーカーの襟を寄せた。
 そう広い家ではない。寒がりの岬が寝ているとしたら、隣の部屋位しかない。音を立てないようにドアを開けると、付き合う前に使っていたベッドで、岬は置いていた毛布に包まって眠っていた。その姿だけでも寒そうだと思う。だが、抱き上げるには良い姿勢だ。丸まっている姿勢のまま毛布の下に腕を入れて抱き上げた。

 例えるなら毛布みの虫としか呼びようのない姿のまま寝室に連れて来たところで、岬が少し動いた。極力起こさないように努力したつもりだったが、そういう訳にもいかなかったらしい。
「・・う・・ん」
フニャフニャと言いながら、岬は少しずつ目を開けた。
「わか・・ばやしく・・ん?
すぐには自分の状況が掴めないらしい。何度か瞬きをしてから、岬は目を見開いた。
「おやすみ、岬」
目を覚ましてしまう前なら、と岬を抱き込み、布団をかぶった。温かさに手足の力が緩み、岬はすぐに寝息になった。夜を包むような雨音に、静かな寝息が溶けていった。

 朝、目を覚ました岬は不思議そうに辺りを見回した。
「あれ?」
その反応で、昨夜の行動はわざとだったのだと確信した。
「俺がこっちに運び直した」
「どうして」
「それはこっちの台詞だ」
寒がりの癖に、どうしてあんな所で寝ていたのか、寝ぼけた訳でもなく、自分の意志で移ったのは今の台詞からも明らかだった。
「・・暖かかったから」
しばらくの沈黙の末の岬の答えはまるで謎掛けで、およそ納得のいくものではなかった。答えにもなっていない。
「迎えに行った時、寒くて抱きついて来てたのにか?」
少しの事実に願望を交えて話すと、岬は「え?」と声を発して動きを止めた。
「・・・だからだよ」
それまでの眠そうな声の印象が変わった。柔らかい中に、一本芯が通ったような強さが加わり、いつもの岬の声になった。
「明日には帰るんだよ?温もりに慣れたら、眠れなくなりそうだから」
一瞬意味が分からず、理解は徐々に追い付いて来た。拍子抜けするよりも先に、感情が動きそうになる。
「どういう意味だ?」
激しく揺れる感情を押し殺して、努めて静かに尋ねた。自分の理解が正しいのか、目を逸らした岬の感情を探る。
「夜に目が覚めたら、すごく暖かくて」
その声が震えているように聞こえるのは、俺の気のせいではないかも知れない。目を伏せたまま、物思いに耽るようなゆっくりとした口調で岬は続ける。
「若林くんといるんだと思ったら、つい」
「それなら、何故・・」
言いかけたところで、岬は顔を上げた。普段と変わらない表情のくせに、それを台なしにする程、頬が赤くなっている。
「帰るのが辛くなりそうだから」
岬の感じた暖かさがどんなものだったか分かる気がした。今、胸の中を暖かいものがじわじわと広がっていく。岬といる時のこの感覚は、幸せだとしか言いようがない。
「そんなこと言ったら、帰したくなくなるだろう?」
腕の中の岬の温もりを幸せだと感じ、そんな可愛いことを言う岬が愛しくてならない。
「若林くん、ちょっと・・・」
腕の中でもがいても、離してやるつもりはない。帰らせる気も、なくなった。
「温めてやるから」
岬はびくっと体を震わせた。見上げる瞳と目があって、息を飲んだのは俺か岬か、分からない程にすぐに溶け合った。
 どうせ外は雨で、空も雲に閉ざされている。出掛ける予定もない以上、残された時間を有意義に使う方が良い。それには、温め合いたいと思った。次に会うまで、寒さを感じないように。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
急に寒くなりました。
相変わらず調子良くないので、寝ます。
スポンサーサイト



テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


コメント
。゚( ゚இωஇ゚)゚。
寒いです。
この時期のハンブルクは夜で五度以下になる日もあります(スマホの世界時計情報)。
そんな中でくまさんの温もりを離してでも強くあろうとする岬ちゃんがいじらしくてやばいです。
若林さんにはもうそんないじらし可愛い(そんでそんな部分がちょっとエロい)岬ちゃんを
骨髄まで暖めてあげてほしいです。
てゆかもう結婚しちまえよと思いながら読みました。
[2015/11/05 23:42] URL | みちんこ。 #ntbreMG6 [ 編集 ]


ご無沙汰しております。
若林くんがあまりに格好よくてクラクラしました。
これからの季節は必需品ですよね、若林くんの高体温は。
もう思う存分二人でいちゃついて温めあっていただきたいです。
[2015/11/06 02:31] URL | 銀月星夢 #mQop/nM. [ 編集 ]

Re: 。゚( ゚இωஇ゚)゚。
みち.んこ様。コメントありがとうございます。
ハンブルク寒すぎですね…うん、骨の髄まで暖めてあげて、離れられないようにしてほしいと思います。
外はどんなに寒くても、お互いがいれば楽園、それが源岬ということで、早く結婚してほしいです。
[2015/11/17 21:28] URL | 真 #- [ 編集 ]

Re;タイトルなし
星夢様、コメントありがとうございます。
若林くんの体温、確かにこれからの時期にはピッタリですよね。
温もりを覚えた岬くんが離れられなくなるまで、温めてほしいものです。
[2015/11/17 21:32] URL | 真 #- [ 編集 ]


コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


トラックバック
トラックバック URL
→http://sukinamono11.blog63.fc2.com/tb.php/1144-c96e8120
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)