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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
手紙
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

「手紙ありがとう。なかなか手紙もらうことないから、嬉しかった」
そう話す岬の言葉が嘘なのを知らない訳ではない。岬が知らない相手から手紙をもらっているのは、来た時に分かった。所在なくまとめて置かれた手紙は、捨てるに捨てられない結果だろう。
「じゃあ、また書くな。岬、返事はくれるんだろな?」
それでも、俺の手紙は喜んでくれたらしい。弾む声で、手紙を広げられるのは気恥ずかしいものがある。
「何回も読み返したんだよ。返事書く前に若林くんが来たのは意外だったけど」
「岬に不意打ちできたのなら、来た甲斐があったな」
そう言う岬こそ不意打ちばかりだ。たまには驚かせるのも良い。玄関先で俺を見るなり、ビックリしたじゃないか、と目を丸くして声を上げた岬は可愛かった。
「便箋もキレイで、ステキだった」
それは、そうだろうな。絵柄付きの便箋なんて、俺も初めて買った。
「あれ、岬のこと考えながら選んだんだぜ」
つい、言ってしまった。岬はキョトンとした顔で、目をぱちぱちさせた。
「そうなんだ?」
いつもより、ほんの少し高い声で岬は聞き返した。そう意外なことだったろうか。
「だって、お前いつも空のきれいな日に不意打ちして来るだろ?」
「あ、あれは・・・」
最初の出会いのことを衝かれると弱いのか、岬は口ごもり、それからクスッと小さく笑った。
「何がおかしい?」
「確かに、若林くんとはいつも青空の下で会ってる気がするな、と思って」
晴れやかに、それこそ青空を思わせるような清しく岬は微笑む。

 俺は、その不意打ちごとに恋に落ちる。

 そんなことも言えずに、あの便箋を選んだ。

「それにしても、若林くんって手紙上手いよね。しばらく日本離れてるとは思えない」
「そうか?」
単に書き慣れているだけだ。両親から見上さんから修哲の仲間やら翼やら。特別なことは何もない。それでも、岬が喜んでくれるのは嬉しかった。三年間、誰よりも手紙を書きたい相手だった。
「会いたいなって思ってたら、若林くんが来て・・・」
そう言ってから、岬の頬が徐々に染まっていくのを見ていた。会いたいという気持ちを込めながら、その半分でも会いたがってくれたら、と思っていた。
「俺はずっと会いたかったぜ。三年前から」
いつか会える予感はしていた。もし会えなくても、探し出してやろうという気もあった。もし岬が会いに来なければ、そんなことを考えたかも知れない。
「若林くん」
澄んだ大きな目で見つめられて、つい息を飲む。
「僕もだよ」
甘い瞳で微笑まれて、鼓動が跳ね上がる。胸の中で何かが沸き上がる。それにつき上げられるままに、言葉にした。
「じゃあ、返事は今くれ」
自分でも行儀の良い話ではない。がっつき過ぎだろう。だが、逸る心をどうしても抑えられそうにない。
「手紙の?」
首を傾げ、岬はごく不思議そうに尋ねた。もし、この想いを伝えても、その笑顔は変わらないのだろうか、積んで置かれたままの手紙を思い出す。そういうのは苦手だ、と言っていたことも。
 それでも、想いは止められそうになかった。
「告白の。好きなんだ」
「えっ!?」
目を見開いた顔が愛らしく、少し和んだのは一瞬だった。岬は俺を見返した。
「あの・・・若林くん・・」
取り消して欲しいと言わんばかりの困った表情だった。そりゃ、いきなりこんなことを言われたら、嫌がるかも知れないが。
 岬が口を開く前に、言葉を接ぐ。
「なあ岬。俺、あの日も、捕まえるつもりだったんだぞ」
あの時も、あの時も。簡単に捕まえられそうな華奢な背中を、何度追ったことだろう。
「だから、捕まえに来た。捕まえても良いか?」
テーブルの上に手を伸ばした。小さく細い手に逃げられる前に、手を重ねた。
「・・・もう捕まえてるじゃない」
一回り大きさが違うせいで、岬の手は見えなくなっている。明らかに笑っている口調に、顔を上げると、岬はじっと俺を見ていた。探るような目には怖れはなく、むしろ冷静に見えた。
「そんなこと言ったら、手握るぞ」
「何だよ、それ」
そのまま手を押さえても、岬は払いのけようとはしなかった。じっと見つめて来る視線に、俺も視線を定める。小さなテーブルを挟んでもごく近い距離で、握った手からは岬の体温が伝わってくる。想像した以上に小さく柔らかい手に、掴んだ手には力がこもった。
「捕まったら、どうなるの?」
岬がぽつりと言った。静かな口調からは拒絶の意志は感じられなかった。
「さあ。でも、ずっとお前を捕まえたいと思ってた」
心に足跡を残し、消えた姿を追えたなら。目の前の岬を口説くのは、それよりはずっと楽だった。会いたくても、消息も分からずに、ただ抱えた想いを持て余すよりは。
「せめて、手紙だけでも出せるようにな」
俺の言葉に、岬は小さくため息をついた。吐き出される息と共に、下りた瞼は白く、伏せられた睫毛が瞳に影を落とす。重なった手に視点を定めたまま、岬は小さく呟いた。
「・・・だから、捕まっちゃったんだろうな」
あまり悔しそうに言うから、可愛くなって仕方なかった。

「もう、突然来たって、絶対入れないから」
どうしても我慢できず、抱き締めてしまった俺を追い出して、岬は言った。ガラスの向こうに見える岬の頬はばら色に輝き、潤んだ目には星が瞬く。説得力はない。だから、言ってやった。
「じゃあ、お前が会いに来たくなるような手紙書くからな」
岬は更に赤くなり、そして、慌ててドアを開けてくれた。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
「返事を書く前に来てしまう若林くん」というのを思いついたので書いてみました。・・・いつものままでした。

以下、拍手お礼。
桐乃様、いつもありがとうございます。
新田くんに可愛い、のお言葉も嬉しいです。結局憧れの先輩なんだろうな、と思って書きました。でもきっと、真面目な先輩には叱られることでしょう。岬くんは一人っ子ですから、三杉くん辺りから苦情を言われたら、何をやってるんだろう、と呆れると思います。でも、末っ子でかつキャプテン歴の長い若林くんは新田くんのそういう感情も分かっていて、「まあまあそう怒ってやるなよ」位は言ってくれそうな気がします・・・って、これってお父さんみたいですね。
若林くんの台詞はそんな思いを込めて書きました。
新田くんは確かシュート力をアップするために若堂流に入門していたような・・・RoadTo復習しておきます。

拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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