※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 岬の家で、スケッチブックを見つけた。野外で描くことの多い親父さんのものにしては、余り汚れていないように見える。 岬は洗濯物を干している最中だ。以前手伝おうとした時に、お客さんはゆっくりしていてよ、と言われたので、以来おとなしく待つようにしている。 つい、そのスケッチブックを手に取る。一枚めくって、予想が外れていたことに気付いた。緻密な絵の端に書かれたサインからすると、持ち主は岬らしい。凱旋門、エッフェル塔、モンマントル、ルーブル・・・岬と観光でまわった場所を脳裏に蘇らせ、岬の画力の高さを思い知る。 「何してるの?」 「わっ」 いきなり後ろから声をかけられ、俺は思わず声を上げた。普段そんなことなんかしないくせに、気配まで殺しやがって、岬め。 「岬、絵うまいんだな」 「そのまま写してるだけで、つまらないスケッチだよ」 岬は本当に素っ気なく言うと、スケッチブックを奪おうとした。まあ、そんなことを許すはずもないのだが。 「うまいと思うけどな」 「もう、勝手に見ないでよ」 岬は少し頬を膨らませると、少し離れて座る。そんなことしたら、俺がどうするか分かっているくせに。 「それに暑いんだからくっつかないの」 「エアコン強くしようか?」 苦情を言う岬の肩を抱いて、スケッチブックのページを操ると、岬は少し恥ずかしそうに視線を逸らした。 絵を見た途端、岬の動きの意味が理解できた。パリの風景の後に、もっとラフなスケッチが入っていた。グラウンドにそびえるゴール。その前でボールをキャッチしているのは恐らく俺。 「こんなのいつの間に」 「この前見に行ったから。けっこう頑張って描いたよ」 そう言って岬は微笑む。少しだけ恥ずかしそうにしていても、その笑顔を見れば、試合の後に駆け付けてくれた時のことを思い出す。 「さすが若林くん!」 珍しくはしゃいで飛びつく岬に、ただでさえ高揚していた気分が更に高ぶり、カルツが止めてくれなければ、その場でキス以上のことをしかねないところだった。 「確かに、良いセーブだったと自分でも思うぜ」 「うん、あれはすごかったよ」 「何だ、惚れ直したか?」 「それは自惚れ過ぎ」 ピシャリと断ってから、岬は微笑んだ。 「つい、描きたくなったんだよ」 岬の絵でなければ、こんなに嬉しいとは思わなかった。画面の中に息づく、岬の目で捉えた俺は、予想外に凛々しく、大きく描かれていた。 「なあ岬、これもらっても良いか?」 「え?」 岬は一瞬でみるみる赤くなった。まるでいたずらが見つかった小学生のようだと思う。初めて会った時も、そんな顔だった。 「ダメだよ、ラフスケッチだし」 確かに、顔も僅かな線で表されているし、言われなければ俺とは分かるまいだが、その荒っぽさにかえって岬の感情が篭っている気がした。 「それが良いんだ。岬の秘密って感じで。このスケッチブックごと欲しいぐらいだ」 「・・・っもう」 応える声が小さいのは、恥ずかしいせいだろう。岬は褒められるのを嫌がることが時々ある。自分で納得していない時、評価が過大である時・・・もっと自分に自信を持てば良いのに、何かに罰せられでもするかのように、頑なに拒む。 「じゃあ、改めて描いてくれよ、目の前で」 「ええっ!?」 頷きかけた岬が、慌てて顔を上げる。そう言えば、絵を描く岬は見たことがなかった。このスケッチブック自体も初めて見る。 「他にはないのか?」 「あるけど、見せないよ」 感情を押し殺すように笑った岬に、今までのスケッチブックの内容を推し量れる。岬が行った土地、出会った人々、岬を形作るものが描かれているに違いないと思った。 「良いぜ。見なくても大体分かるから」 岬がいちいち語らなくても、今までどんな風に過ごして来たかは分かる。岬のサッカーを見れば、どんなサッカーをしてきたか想像もつく。すべてを知る必要はない。岬が隠している部分まで、全部受け入れる覚悟はできているから。 「でも、いつか見せてくれよ」 小さく頷いた岬はスケッチブックを捲り、さっきのページの続きを見せてくれた。それは、楽しそうに笑っている俺の顔で、今の俺を鏡で映せば、同じ表情が浮かんでいるに違いない。俺の想いも岬の想いも詰まった絵に、また抱き締めたくなって困った。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 昨日はルータが故障し、ネットが使えなくて困りました。 朝になったら、ルータは復旧していたのですが、自分が風邪で動けなくなっていました。仕事には行きましたが。 最近体調が悪いので、気をつけていたのですが、寒くなったらてきめんです。 とりあえず、GC月間の前に更新したかったので、これ打ち終わったら寝ます。今週は日曜まで休めないので。 あてにされるけど人望ないって、三杉くんみたいだと思っておきます。はあ。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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