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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
夢五夜 第四夜
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。
※昨日の話とは繋がっておりませんので、ご安心ください。


 こんな夢を見た。

 気が付くと、岬が小さくなっていた。
 俺の掌に乗る程小さくなった岬は、どうしよう、と呟いた。それこそ囁きよりも小さな声だったが、すぐにそれと知れた。
「どうしてそうなった?原因はないのか?」
俺が尋ねると、岬は半分耳を塞いだまま首を振った。
「それが分かったら苦労しないよ」
岬の声はよく通るが、それでも相当大きな声で、岬は訴えた。
「これじゃ、サッカーできないよ」
肩を落とし、うなだれる様子に、何かできることはないかと考える。それも思い付かないまま、岬の横に、親指を伸ばした。
「もたれろよ。今はそれ以外のことができないから」
慰めることも抱き寄せることもできない。岬は素直に身を預けてきたが、その重みを感じることすらできない。
「大丈夫だ。俺はずっと側にいるぞ」
「若林くん・・」
顔を伏せ、恐らく泣いている岬の涙すら拭えない。こちらから触れることも恐ろしい。
「とりあえず、昨日の行動から考えようぜ」
言ったところで、ふと窓の外の明るさが気になった。こんなに眩しかっただろうかと外に目を遣ると、見慣れた景色とはまるで違っていた。
 見慣れた町並みではなく、眼下に広がるおもちゃのような地図。
「岬、ちょっと外へ出るぞ」
岬をシャツの胸ポケットに入れ、俺は部屋を出た。

 ドアの外には、おもちゃのような町並みが広がっていた。少し遠くにチームのグラウンドが見えることを考えれば、よく知る町が縮小して目の前に広がっているのだと理解できた。

 どうやら、岬が小さくなったのではなく、俺と周囲が大きくなったらしい。サッカーができないのも俺で、どちらにしても、岬と愛し合うことはできない。
「若林くーん」
声がこれだけはっきり聞こえるということは、岬は大声で叫んでいるに違いない。
「どうした?」
耳を澄ましながら尋ねると、岬はポケットから身を乗り出すように、ぴょこぴょこ動いた。
「ねえ、若林くん。家に帰ろう」
すぐには返事できなかった。岬一人なら町に戻れる。親父さんの許へもチームへも。俺と一緒にいることなどないのだ。
「ああ」
そう答えながらも、岬を町に戻すべきか悩む。ふと目を下ろすと、岬がポケットから顔を出し、見上げていた。
「若林くん」
岬は声が届くように、手を口の隣に当てていた。
「僕が側にいるから」
それから、ポケット越しに熱が伝わって来た。寄り添う岬の暖かさは、すぐに胸の奥に染み込んだ。
「そうだな、帰ろう」
俺は言った。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
岬くんが小さくなる話は別口で書きかけたのですが、こっちにしました。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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