※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 ※昨日の話とは繋がっておりませんので、ご安心ください。 こんな夢を見た。
気が付くと、岬が小さくなっていた。 俺の掌に乗る程小さくなった岬は、どうしよう、と呟いた。それこそ囁きよりも小さな声だったが、すぐにそれと知れた。 「どうしてそうなった?原因はないのか?」 俺が尋ねると、岬は半分耳を塞いだまま首を振った。 「それが分かったら苦労しないよ」 岬の声はよく通るが、それでも相当大きな声で、岬は訴えた。 「これじゃ、サッカーできないよ」 肩を落とし、うなだれる様子に、何かできることはないかと考える。それも思い付かないまま、岬の横に、親指を伸ばした。 「もたれろよ。今はそれ以外のことができないから」 慰めることも抱き寄せることもできない。岬は素直に身を預けてきたが、その重みを感じることすらできない。 「大丈夫だ。俺はずっと側にいるぞ」 「若林くん・・」 顔を伏せ、恐らく泣いている岬の涙すら拭えない。こちらから触れることも恐ろしい。 「とりあえず、昨日の行動から考えようぜ」 言ったところで、ふと窓の外の明るさが気になった。こんなに眩しかっただろうかと外に目を遣ると、見慣れた景色とはまるで違っていた。 見慣れた町並みではなく、眼下に広がるおもちゃのような地図。 「岬、ちょっと外へ出るぞ」 岬をシャツの胸ポケットに入れ、俺は部屋を出た。
ドアの外には、おもちゃのような町並みが広がっていた。少し遠くにチームのグラウンドが見えることを考えれば、よく知る町が縮小して目の前に広がっているのだと理解できた。
どうやら、岬が小さくなったのではなく、俺と周囲が大きくなったらしい。サッカーができないのも俺で、どちらにしても、岬と愛し合うことはできない。 「若林くーん」 声がこれだけはっきり聞こえるということは、岬は大声で叫んでいるに違いない。 「どうした?」 耳を澄ましながら尋ねると、岬はポケットから身を乗り出すように、ぴょこぴょこ動いた。 「ねえ、若林くん。家に帰ろう」 すぐには返事できなかった。岬一人なら町に戻れる。親父さんの許へもチームへも。俺と一緒にいることなどないのだ。 「ああ」 そう答えながらも、岬を町に戻すべきか悩む。ふと目を下ろすと、岬がポケットから顔を出し、見上げていた。 「若林くん」 岬は声が届くように、手を口の隣に当てていた。 「僕が側にいるから」 それから、ポケット越しに熱が伝わって来た。寄り添う岬の暖かさは、すぐに胸の奥に染み込んだ。 「そうだな、帰ろう」 俺は言った。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 岬くんが小さくなる話は別口で書きかけたのですが、こっちにしました。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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