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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
ブーケ(4)
※女性向け二次創作、というかDRAGON PUNCHER さまのフリー素材なので、三次創作です。苦手な方はご注意ください。
最終回。



 翼くんの結婚式は、チャペルで厳かな雰囲気の中行われた。
 いつものみんなを知っているだけに、翼くんのことを祝いたい気持ちが伝わってくる。白いベールを被った中沢さんはとてもきれいで、翼くんを見上げる目には、涙が光っていた。中沢さんがどんな思いでこの瞬間を迎えたのかを思えば、僕まで涙を誘われる。
 泣きそうになるのを我慢して、周囲を見渡すと杉本さんが泣いているのが見えた。それから森崎くんも。やっぱり、みんな同じ気持ちみたいだ。と思ったら、浦辺くんと石崎くんまで泣いている。石崎くんなんか、タキシードの袖で拭こうとするから、涙ぐんでいた西本さんが毅然と顔を上げ、さっさとハンカチを渡していた。・・・あの二人は、ずっとあんな感じなんだろうな。
 と、思ったら、向こうの列で小次郎が、うわっ何やってるんだよ・・・。小次郎もハンカチを持って来ていなかったみたいで、若島津が慌てて取り出したハンカチで、顔をごしごしこすっている。泣きすぎだよ。顔真っ赤じゃない。

 まあ、小次郎はある意味中沢さんとシンクロしちゃうかも。

 そうやって涙を堪えている内に、指輪交換が始まった。翼くんと中沢さんの門出だから、最後までちゃんと見届けてあげたいと背筋を伸ばして、気付いた。隣で泣いている若林くんに。
 僕は、まだ足が痛むから、いつ出て行っても良いように、一番後ろの席に座った。みんなに囃されるから嫌だって言ったのに、若林くんはそのまま隣に座っていた。そして今は感極まった様子だ。
 若林くんは翼くんとの付き合いも長い。僕の転校の少し前からだと聞いている。「ちょうせんじょう」の話は二人から聞いた。対抗戦のことも。僕とはまた違った翼くんとのつながりがあって、やっぱり感慨深いんだろうな、と思う。懐も深いけど、情も深くて、優しいひとだから。

 大丈夫だよ。若林くんの手を、そっと突いた。僕はここにいて、君を支えてあげる。誰もが君を強いと言い、自分でもそう思っているけれど、そうじゃない部分があるのもよく知っている。若林くんが握りしめていた手を少し緩めた時に、手を滑り込ませて、若林くんの手を包んだ。

 教会内はすごく静まり返っていた。泣き声も止み、みんなが誓いのキスを待ち構えている時だった。

 その時、手を不意に握り返されて、僕は慌てた。声までは出さなかったが、息を飲んだ。

 若林くんは僕の手を握り、嬉しそうに笑いかけて来た。確かに、誓いのキスの最中に手を握ってあげたけれど。・・・でも、そんなつもりじゃない。合わさった手を持ち上げて、若林くんは捕まえた僕の手に唇を寄せた。

 しまった、と思ったけれど、もう遅かったらしい。若林くんはそのまま肩を抱き寄せてくる。
「信じる気になったか?」
「なってないよ。・・・信じたくなったけど」
「・・・寂しいくせに」
そう言って、涙を拭われて、僕は自分が泣いていたことに気付いた。みんなから見えないように、抱き寄せてくれたことにも。

 最初から、分かっていた。
 若林くんが僕のことを好きなこと。
 今まで通りに接することを望む僕の気持ちを大切にしてくれること。
 僕の弱さまで、好きでいてくれること。

 でも、分かっていなかった。
 優しさに甘えて、気付かないふりをしていたこと。
 若林くんの気持ちを信じられないほど、僕は若林くんのことが好きなこと。
 離れられないくらい、大好きなこと。

「君の望むような気持ちかは分からないよ」
「でも、一緒にいてくれるんだろ?」
ブーケを投げる中沢さんを、みんなが囲んでいる。翼くんはボールを投げても良いよねーと聞いてきた。壁際の椅子に座ったまま「駄目だよー」と返事をした。当然のように手を貸してくれた若林くんはまだ隣にいて、耳元に囁いてきた。
「考えておくね」
後ろ上方を振り返り、そう囁き返したところで、膝の上に何かが勢いよく飛んできた。
「えっ!?」
中沢さんが投げたブーケは、勢いがありすぎて、西本さんの手も、杉本さんの手も弾いてしまったらしく、きれいな放物線を描いて、僕の膝に落ちたようだ。
「結論出たな」
若林くんはにやり、と口元を歪ませると、僕の膝のブーケを高く掲げた。
「あねご、ブーケありがとうな」
新郎新婦が複雑な表情になったことは言うまでもない。でも、そう叫ぶ若林くんがとても幸せそうだったので、僕は少しだけ、ほんの少しだけ譲歩することにした。

 その譲歩の結果が、国立競技場での結婚式になるなんて、この時の僕は夢にも思っていなかったのだった。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
1の冒頭で書いた通り、この話はリンク先DRAGON PUNCHER さまのみちんこ様の「フリー素材」をお借りしました。せっかくなので、と書いてみたのですが、原形を留めない代物となり果てました。何より、いつもよりちょっと乙女な岬くんになってしまったので、最初から女子にすれば良かったと、後悔しました。みちんこ様すみません。そして、ありがとうございました。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


コメント
ぴゃあぁ
まさかあの与太話が四回にも渡る(゚∀゚)ノ キュンキュン!ストーリーになるなんて!
ありがとうございます!!
話の大筋は同じでも矢張り真さまの味付けになると「こうきたか!!!」と肯きつつ勃起しつつつつ読みました!!
岬ちゃんが最後に自分の気持ちに気付けた事も嬉しかったです。
最後のブーケも可愛いし、あねごどんだけ強肩やねんと笑ったし、
何よりオチの国立競技場が気になりますwwwwwwwwwww
重ね重ねありがとうございましたe-446
[2015/07/13 05:14] URL | みちんちん。 #ntbreMG6 [ 編集 ]

こちらこそありがとうございます
みち(以下略)様、こちらこそありがとうございます。
萌え素材にワクワクしながら書かせていただきました。
サトラレの岬さんと余裕の若林さんと、余計な味を付け過ぎて、
素材を殺していないか心配でしたが、オチだけは頭を捻りましたので、
楽しんでいただけたようで良かったです。
[2015/07/13 22:51] URL | 真 #- [ 編集 ]


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