※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「明日には、この合宿所ともおさらばだな」 日向の言葉に、三杉が頷く。 「そうだよ。それと、彼とも、ね」 三杉の視線の先には、翼とボールを奪い合っている岬がいる。 「何か、してやりたいよな」 もう休憩時間なのに、走り回っている二人組を、みんなして眺めている状態だ。黄金コンビと呼ばれるだけあって、単なる練習でさえ見ごたえがある。 「そうだな…」 若林があごに手をやった。和解を経て、若林も今や自然に会話に参加するようになっている。 「じゃあ、こんなのはどうです?」 若島津は隣に座る日向の耳元に、何やら囁いた。
「午後から紅白戦をやります」 昼食の最中、コーチの声色で三杉が言う。練習時間からすると、これが最後の練習になる。 「チーム分けは?」 「どう分けるんだ?」 「そう言われると思って、ホワイトボードに書いておいたよ」 赤 白 FW 日向 滝 反町 来生 新田 MF 翼 岬 松山 三杉 佐野 井沢 沢田 立花 立花 DF 次藤 高杉 早田 石崎 GK 若島津 若林
途中からしかプレイできない三杉を除くと、同じ10人ずつのチームではあるが、際立った特徴としては、翼と同じチームでプレイしたことのある選手は皆白組に振り分けられていることだった。特に、岬は翼が戦いたいと言った相手であり、若林は翼との勝負が引き分けに終わったままだった。 「すごい、すごいよっ」 感嘆の声を上げた翼に、画策者達は甲斐があった、とほくそ笑む。黄金コンビの対決が見られるだけでも面白いというのに、翼の味方は元敵チームの人間ばかりで、盟友の若林までもが敵にまわる。 「それと、今年翼くんと対決していないのは僕だけだからね」 三杉の口調は静かだったが、燃え上がるような闘志は押さえきれない。 「じゃあ、よろしく頼むね、翼くん」 隣で昼食を摂っていた岬が、翼に手を差し出した。岬にとっては、旧明和のメンバー以外は未知の敵、である。 「こちらこそ。若林くんも」 岬の隣に座っていた若林も頷いてみせる。笑ってはいても、鋭い眼光は隠しきれるものではない。 「ああ。三年ぶりの対決だからな。楽しみだ」 口角だけを上げてみせた若林の笑みは、敵に見せるものに他ならなかった。
キックオフは、白組からだった。立花兄弟がセンターラインからパスで上がる。三杉の加入する後半までは、白組は守備中心の花輪方式を取ることにしていた。攻撃は立花兄弟のみの役割である。立花兄弟はポジションとしてはMFであるが、FWもこなせる為、この作戦には良い人選である。三杉らしいチーム分けだと、岬は思った。 「俺達を突破できると思うなタイ」 「そうやで。かみそりタックル!」 赤組のDFは次藤と早田である。ゾーンではなく、マンディフェンスを得意とするDF二人は、早速立花兄弟につく。 「頼むぜ、井沢」 政夫はバックパスで流す。井沢から滝にパスが渡り、滝はライン際を上がる。 「ワンパターンだよ、それはっ!」 滝からボールを奪おうと翼は走り寄る。だが、翼がボールを奪ったと思った瞬間、滝のパスを受け取ったのは岬だった。 「来たね、翼くん」 翼のマークについた岬が微笑む。味方の時には見せない顔だ、と思った瞬間、翼の血が騒いだ。グラウンドで、岬は誰よりも翼を理解してくれる相手だった。欲しい時に正確無比なパスをくれ、欲しい時に的確なフォローをしてくれた。本能で通じ合っているようなパートナーが、敵の顔をして、目の前にいる。岬は井沢にパスを渡すと、そのまま翼のマークについた。 「対決はしてくれないんだね、岬くん」 「うん。翼くんを押さえるのが僕の仕事だからね」 さすがに、手ごわい、と翼は思う。足の速さはそう変わらない。体力も、判断力もそうだろう。さすがに、自分の方が筋力や腕力、脚力はあるが・・・それを活かす場に持って行かせない岬の作戦は今のところ、うまく有効だった。 「南葛は総合力の高いチームだからね。立花兄弟に攻撃に専念してもらえるだろう」 三杉はそう言った。とはいえ、決定力に欠けるのも事実で、立花兄弟の放った2本のシュートはいずれも若島津に止められていた。 「あれで、けが人なんだから、恐れ入るぜ」 「さすがは若島津さん」 さすがにキャッチはできないから、と2本とも蹴り返した若島津に、敵味方問わない拍手が起こる。 だが、キーパーでは白組も劣るものではない。三杉が入るまでの交代要員である森崎をDFとして使ったゾーンディフェンスで、若林は赤組のシュートを防いでいた。 「日向はペナルティエリア内から打たせるな」 さすがは修哲を束ねていただけあって、若林の厳命は守られている。ペナルティエリア外とはいえ、日向の放ったシュートを石崎が顔面で防ぐ場面もあった。 「・・・ここは俺が」 後半開始10分、来生のパスをカットしたのは、松山だった。そのままドリブルで上がると、松山はペナルティエリア内にまで入る。 「岬くん、行かなくて良いの?松山くんって良いドリブルしてるよ」 「大丈夫。それは僕の仕事じゃないよ」 乱暴なことはしない。それでも、自分の向かう方角を予想しているかのような岬に、翼はつい焦れる。翼自身、向かってこない相手に強引なプレイはしにくいし、何より相手は岬だ。三杉が加わる前に何とか先取点を、と気は焦るが、若林は鉄壁の防御を誇っている。 「ほら、井沢が追いついた。君と練習してるから、南葛のみんな、うまくなったよね」 シュートコースを狭め、パスコースを塞ぐ。修哲時代のノウハウと今のテクニックで、白組のDF陣はその仕事を完璧にこなした。 「でも、翼くん、三杉くんが入ったら、君と対決しないとならなくなるんだよね・・・」 パスコースを塞ぎながら、岬は呟いた。
森崎へのパスをカットすると、日向はそのままドリブルに入った。新田と反町も近くにはいるが、若林からゴールを奪うのは自分の仕事だと日向は思っていた。さらに、オフサイドトラップの練習の成果を生かし、白組のDFはかなり前進している。他の者にはパスを出せない。 「うおお」 突進してきた高杉をかわし、タックルをかけてきた石崎をかわす。こうなれば、若林と一対一になるはずだった。 「ネオタイガアアショットオオオ」 空中でシュート体勢に入る。今の日向は、ペナルティエリアには拘りはない。 「見えた!」 渾身の力を込めたシュートだった。しかし、若林は只者ではなかった。日向のタイガーショットを受け止めるまではいかなかったが、パンチングで弾いた。 「よし!」 そのこぼれ球を拾ったのは新田だった。俊足を生かし、ノートラップで隼シュートを打ち込む。だが、そのシュートはバーを超えて行った。 「頼んだぞ。三杉」 若林はセンターラインの三杉に向けて、ゴールキックを放った。
「行くよ、岬くん」 「うん、三杉くん」 微笑みながらパスを交わす三杉と岬は一見優雅であるが、他の者に付け入る隙を与えない程の気迫に満ちている。翼のマークは立花兄弟に代わっていた。 「黄金コンビ並の早さだぜ・・・」 抜かれた松山が悔しそうに呟く。三杉も岬も上手いのは分かっていたが、ここまで完璧に合わせてくるとは思っていなかったのだ。 「三杉くん、そうやすやすと抜かせないよ」 「そう来ると思ったよ、翼くん。それ、岬くん!」 翼は三杉のマークをするが、その間に、岬がドリブルで突破していく。沢田、佐野と抜かれ、次藤、早田と抜かれる。 「残念だが、岬じゃ若島津は突破できない」 日向はそう読み、若島津からのパスを待つ。それに対し、岬が取ったのはセンタリングだった。来生や滝だけでなく、長身の井沢が詰めているのに気付いた若島津はキャッチしようとする。だが、井沢のヘディングの方が早く、ボールを足元に落とす。そこには、立花兄弟がいた。 「スカイラブハリケーン!」 しかし、若島津の反応は早かった。素早く体勢を立て直す。だが、和夫のヘディングしたボールはゴールポストに当たり、それから三杉に押し込まれた。
「・・・岬くんがあんなに意地悪だと思わなかった」 試合が終わって、翼が岬に言う。 「だって、敵だったから。手加減してほしくはないよね?」 岬はにこにこ微笑む。もう、敵の顔ではない。翼のよく知る、いつもの岬の顔。 「三杉くんとも戦えて、嬉しかったよね?」 「その分、若林くんと戦った気がしなかった!!」 翼の苦情に、岬は困ったように、背後の若林を振り返った。 「三杉が入るまで、お前を完璧に押さえる。岬と俺の作戦だぜ。文句あるか?」 「ないよ」 なおも不服そうな翼に、岬は笑いかける。 「南葛中って良いチームだね。君が作ったチームなんだから、負けても恥ずかしくないよ」 「良いチームに育てたな」 自分達が知っているよりも何倍も強くなっていた。そんな感慨が二人の言葉に溢れている。立花兄弟の力を借りたとはいえ、ゴールでの攻防は確かに南葛中のチーム力だと岬は思う。簡単な指示であれだけのことがやれたのだ。 「ありがとう」 翼は、二人に頭を下げた。他のチームメイトには悪いけど、負けた気がしない、と翼は思った。
(おわり)
GC月間の締めくくりに。翼くんの台詞量が多いです!それなのに・・・活躍するのは翼くん以外。ああ・・・。南葛中のみんなが活躍する話が書けて、何だか嬉しいです。ちなみに、最初は若林くんがオーバーラップする展開だったのですが、他の話で使ってしまったので、今回の話に。翼くんと対決する三杉くんが妙に嬉しそうになってしまいました。
相変わらず疲れが取れない・・・寝ます。目次の更新と返信はまた後日で。すみません。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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