※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「これ…すごいね」 三杉の言葉に、驚いて振り返る。奴の賞賛を受けるようなものを置いていた覚えはない。慌てて振り返って、三杉のとても楽しそうに細められた目と視線が合った。 そして、三杉の指し示す先には、一枚の絵画。 「この額、相当の代物だね」 含み笑いがわざとらしい。 誰が描いたかなんて、分からないだろう。そうは思うのに、気持ちの悪い汗が背中を伝う。
三杉は俺が答えるのを期待してか、じっとこちらを見ている。意地悪く、物見高く、無慈悲に輝いている目を、ふんと顔を逸らせて振り切った。
たぶん、この反応だけで分かってしまうに違いない、と思う。
俺の家の中で、最もくつろぐリビングのソファ、そのほぼ正面に飾られている、その事実だけで語るに落ちるのかも知れない。
何度目かの誕生日に、あいつがくれた。 「あまり上手じゃないけどね」 何度かリクエストした末のプレゼントだった。 「開けても良いか?」 「…僕が帰ってからじゃ駄目?」 「俺は早く見たい」 「じゃあ、どうぞ」 気の進まない様子でも、お許しを頂いた以上は、問題ない。丁寧な包装ももどかしいくらい、急いで開けた。俺の喜ぶ顔は見たいけれど、やっぱり恥ずかしい。岬の表情はそんな風に見えた。 いつも俺の誕生日には手作りのプレゼントをくれる岬だが、それだけは嫌だと固辞していた。 岬は絵が上手いというのは、同じ学校出身の奴らから聞いていた。残念ながら、俺はそれを見る機会もなく、だから、意地になっていたのかも知れない。
淡い色彩で彩られたキャンパスに描かれているのは青い空。昔、共に同じ旗を目指した頃に見上げた空だ。 異国に渡って、もう久しいというのに、故郷の空だと気付いた瞬間、心が揺れた。
どんなものを持って来ても、結局郷愁でしかない。それなら、早く新しい土地に慣れた方が良い。そう言う俺に、岬は静かに微笑んだ。 「でも、帰る場所があるのは、良いね」 「お前くらいいつでも受け止めてやるよ」 「…ありがとう」
そんな会話を思い出した。 そうありたい、と思う。いざという時に、帰れるところ、になってやりたいと思う。 この空の色を見て、俺の心が揺れるように、あいつを迎える場所になってやりたい。
「僕は絵心なんてないけどね」 「過剰な謙遜は嫌味でしかないぞ」 三杉の家に行ったのは数えるほどだが、岬が驚嘆の声を上げたことを覚えている。投資と称し、値上がりのみを期待した絵画を買い漁ることが流行った時代もあったが、それとは無縁の蒐集だということが、俺にさえ分かった。 「良い絵だと思うよ」 相手はあの三杉だ。純粋に褒めてくれているとは思えない。それでも、訳知り顔でも絵に見入る三杉の表情はどことなく優しく、その言葉がまんざら嘘でもないことを知る。 「それはありがとうな」 静かに言って、俺も絵を眺めた。
俺は、ちゃんとお前の帰る場所になれたか?
雲ひとつない空に、あいつの笑顔を思い出して、そう思った。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 若林くん、お誕生日おめでとうございます! 今年はグラジャンで岬くんとの接触が(衝突含め)多くて、嬉しかったです! 来年も活躍してくれることを期待します!大好きです!
毎年お誕生日話を書いていますが、今年はこれじゃない感があって、こうなりました。 これはこれで、これじゃない感が拭えませんが。 今年は本当は企画もするつもりでしたが、それもできなかったし…。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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