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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
三人の世界
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

 ハードだった練習が終わり、疲れたなあと言いながら引き上げる。それでも、常には敵として対峙している友達と会えることは、松山にとっては本当に嬉しかった。特に、同じように疲れたと言いながらも、笑顔を浮かべる岬は特別な存在だ。
 小学生時代、岬は松山のいるふらの小に転校してきた。同級生だったのはほんの短い期間に過ぎないが、幼い頃からの友達に囲まれていた松山にとっては、突然に来て、突然に去った友達というのは他にいなかった。そして、その岬との出会いは松山の一生を変えることになった。岬と会わなければ、全国を目指すことはなかったかも知れない。サッカーにここまで打ち込むことはなかったかも知れない。
 一緒に走った時間はほんのわずかだった。小柄でもニコニコしていても、岬は決して走り負けなかった。その岬の背中を追って、自分はここまで来た、と松山は未だに思っている。
「あれ、岬、今身長いくつだ?」
「公式プロフィールだと174センチだよ。君とは2センチ差だね」
答えたのは、岬ではなく、いつの間にか二人に追いついていた三杉だ。新田を説教していたはずが、気付かない間に肩を並べている辺り、さすがとしか言いようがない。
「何でそんなの覚えてるんだよ」
しかも、岬のプロフィールに加えて、松山自身のプロフィールまで把握していることになる。頭脳派と言われる三杉だが、そんなデータベースは要らない。
「当然だよ。好きな人のことは何でも知りたいものだよ」
さらり、と答えて三杉は微笑む。せめて、そこでドヤ顔でもしてくれたら、可愛げがあるのだが、三杉はそうではない。
「それ、青葉さんだけにしてあげなよ」
岬はにこやかに、だが突き放すように言った。腹を立てても仕方ないと既に割り切っている様子である。
「弥生くんについて知っているのは、当たり前だよ。君たちについては、彼女も理解してくれているし」
三杉の、さも当然と言わんばかりの回答に、岬は知らないふりをして、松山に向き直る。
「で松山はいきなり何?」
不思議そうに、だが少し低い声で尋ねる岬に、側を歩いていた南葛勢が気付く。小柄なことは、岬の逆鱗である。
「岬大きくなったな、と思って。昔はあんなに小さくて可愛かったのに」
隣に並んで、松山が違和感を覚えたのは、岬の目線が変わらなかったからだ。まずい、という顔で石崎が松山に合図を送るが、松山は気付く様子もなく、更に地雷を踏み抜く。
「まあ今でも可愛いけど」
可愛い顔も、岬にとっては地雷ポイントである。整った優しい顔立ちに、大きな目、色白の肌と可愛い要素を複数揃えていても、岬は頑固なまでに認めない。
 大体、松山は岬のことをかなり小さいと思っているが、二人の身長差が大きかったのは小学生の時くらいで、中学生の頃にはそう変わらなくなっていた。と、岬はもう何度も言っているが、松山が認識しているふしはない。それどころか、未だにさりげなく手を貸してくれたり、気遣ってくれたり、が常態化している。今回は若林くんいないから良いけど、と思いながらも、それ以上岬が言わないのは、相手が松山だからだ。小学生の頃から、松山は少しも変わらない。純粋で優しくて、少し不器用で。だから、松山と接すると自分も昔に戻ったような気がするから、あまり強くは言えないのかも知れない。
「可愛くないよ」
「いや、可愛い」
だが、松山もさるもの、お世辞も社交辞令も言わないが、自分の思ったことは率直に言う性格である。
「岬くんは可愛いよ」
黙ってさえいれば、と条件付きとはいえ、華麗な容姿を誇る三杉が、口を挟む。また始まった、と周囲が呆れるのまでがいつもの流れだ。
「もう、やめてってば。それより、さっき当たったとこ大丈夫?」
これ以上は無駄だと悟って、小さく息をつき、岬は松山の膝を覗き込むような仕草をした。
「相手が新田で、助かったぜ。若島津だったら、アウトだったな」
紅白戦のゴール前、FWの新田が突破をかけようとして来た。チェックをかけていた松山が少し強固に粘った結果、新田のスパイクが松山の足に接触した。三杉が注意したのは、その後転倒した新田が診察に行っていなかったからだ。
「気をつけてね。気が逸るのは分かるけど」
DFがいつもより薄いことを松山が気にしているのは、皆の知るところだ。それでも、それを言葉にして、松山に注意するのは、岬だからできることだった。
「さすが岬くんだね」
「僕は気になったことを言っただけだよ。・・・今は二人より少し年上だし」
松山と三杉はともに誕生日が6月後半である。5月に誕生日を迎えている岬の方が、確かに今は1歳上だ。
「岬くん、誕生日覚えてるんだね」
照れ隠しに微笑む岬に、三杉が微笑み返す。もちろん、さっきの仕返しである。
「友達だから当然だよ」
笑顔で話す岬に、松山も嬉しそうに笑った。視線が合う度に、幸せな気持ちになるのは、大好きな友達がいるから。
「さすがは岬だな」
満面の笑顔の松山を囲み、他の二人も微笑んだ。

「あいつら本当仲良いな」
三人が三人ともお互いを好きで、お互いのことを認めていることが、駄々漏れである。
「ああ。でも、何か可愛いんだよな」
三杉がいるのに、という言葉を飲み込んで、周囲が遠巻きにする中、自分たちだけの世界を作る3Mだった。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
3Mです。
松山くん&三杉くんお誕生日記念に書こうと思っていたものが書けなかったので、急遽こんなのになりました。三人に、いかに他愛のない話をしてもらうかに腐心しました。思えば『闇』もお誕生日記念のつもりで失敗しているので、困ったものです。
松山くん、三杉くんお誕生日おめでとうございます。あの、あまり伝わらないですが、二人とも大好きです。松山くんには汚れ役を振り当てない位、三杉くんはしょっちゅう登場願う位、大好きです。かえって迷惑でしょうが。

さて、リンク先のDRAGON PUNCHER さまのみちんこ様とお話ししていて、若林くんが小学生時代に岬くんを奪っていたら、という話になりました。で、ついふらふらと書いてしまいました。
(この部分よりは、その後の土下座して謝るか、いやそうじゃないだろう、というやり取りの方が勉強になったんですけれど)
で、飾ってくださいました。(ただ、内容が内容なので、パスワード付きにしていただいています)
関心のある方はこっそり見に行ってください。

昔、ある同人作家さん(ギャグ系)がギャグマンガのハシラに「今男子小学生の痴情のもつれを描いちゃってるのね」
と書いていらしたのがとても面白くて、かなり笑ったのですが、まさか自分が書くことになるとは。
しかも、ギャグでなく。
クレスリウム王国さまに寄稿した「僕にできること」とか一応シリアスでしたし・・・。

あと、今日更新したら、宝物絵が随分下に下がってしまうのが残念でなりません。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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