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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
片思い(2)
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

「若林くん、今良い?」
部屋に戻って間もなくやって来たのは、翼と岬だった。
「お菓子貰ったから、おすそ分けに来たよ」
俺の返事を待つこともなく、ずかずかと入って来た翼の後に、岬はそっと入って来た。白いシンプルなTシャツは細い肩のラインを浮かび上がらせ、涼しくみせる。その静かさは、夜の月を思わせた。
「そうか。気を使わせて悪かったな」
「大変だったよねえ、岬くん」
「うん、そうだね」
なかなかの量の菓子を持ち込んで、ニコニコ笑い合う二人には、多分悪気などない。むしろ、俺を気遣って励ましに来てくれたことが明らかだった。俺だって、一人ずつ来てくれたら、こんな気持ちにはならずに済んだ。
「せっかく三人揃ったから、お祝いしようよ」
言い出した翼に、岬は気が進まないのか俺を見遣った。
「僕は良いけど・・・若林くんは?」
「ええ~、良いに決まってるよ!岬くんが来てくれて、すごく嬉しいもん!若林くんもそうだよね??」
「翼くん・・・」
そう言って勢いよく抱き着く翼に、岬は困ったような顔で、翼の肩をポンポンと叩いた。
「僕達急に来たから、若林くん困ってるかも。また出直すね」
案じるような表情は優しくて、もう少し見ていたいと思った。
「いや、驚いただけで、迷惑なんてことはないから」
そのまま、翼の頭をポンと叩いた。岬の方には伸ばせない手で。
「良かった!」
満面の笑みで、翼は床のカーペットに座り込んだ。
「あれ、紙コップ忘れて来ちゃった・・・。ちょっと待ってね」
ジュースを開けようとしていた岬はそう言うと、部屋を出て行った。しっかりしている岬でも、そんなことがあるのかと、焦った表情の可愛さに、少し顔がにやける。

 ふと気付くと、翼が俺の顔を見ていた。
「岬くん可愛いよね」
心の底から同感だが、同意するのはしゃくに障る。触れることもできない俺を尻目に、翼は当然のように岬の隣にいる。そして、岬もそれを望んでいるに違いない。
「お前達は変わらないな」
つい呆れた口調になる。心にもないことを口にしているのは明らかで、俺は目を逸らしながら菓子の方に手を伸ばした。
「岬くんと俺はコンビだからね」
翼はいつも通り屈託のない笑顔で言った。だが、その笑顔は正視できそうにない。
「若林くんは?」
急に聞かれて、思わず顔を上げた。翼を睨んだ。・・・一瞬、目が合った。
「怖い顔だね。まあ、それで分かるけど」
翼がそう言った時に、部屋の外で足音がした。
「ごめん、紙コップ探していただけなのに、みんな色々くれて・・・」
岬の腕の中に、また菓子が増えていた。わーい、と腕を上げて喜ぶ翼に、背を向けたい気分になる。

 翼は良い友達だ。なら岬は?

 ふと気付くと、岬がジュースを注いでくれていた。
「若林くん、大丈夫?考え事してるなら・・・」
覗き込む真剣な表情に、息を飲む。いつも通りに振舞いながらも、気を配ってくれていたらしい。岬らしい気の遣い方に、また心を動かされる。どうしても、どうしても、諦められない。それでも、こうして友達としてでも気に掛けてくれる関係も失いたくはない。
「いや、大丈夫だ。今日の練習のこと考えてた。あ、そう言えばタオルありがとうな」
岬のタオルをいつものように首にかけていると、その甘い香りに、つい考えも甘くなる。もしかして、という希望を抱いては、違うと否定する。
 笑い合う二人には加われそうにない。まして走る二人には。俺はいつも見ているしかない。
「こちらこそ押しかけてごめんね。・・・若林くんと話せなくて寂しかったんだ」
岬があまり優しく微笑むから、容易く手が届く気がして、俺は慌てて自らを戒める。触れなければ、近づかなければ、それ以上傷つくこともない。
「あれ、翼くん、もう眠いの?」
大欠伸をした翼に、岬が気づいて声をかける。岬の指摘は的確だったようで、ふぁふぁと言いながら、肩にもたれかかろうとする翼を、岬が助け起こした。
「岬、後片付けはしておくから、部屋に連れて帰ってやれ」
見兼ねて言うと、岬は少し逡巡した様子だったが、頷いた。
「じゃあ若林くん、甘えても良いかな。ごめんね。おやすみなさい」
岬は翼を抱えるように立ち去った。振り返り、肩越しに投げてきた眼差しに、鼓動が跳ね上がる。
「ああ、おやすみ」
と応えた筈だが、それすらあやふやになる程、岬の面影が胸に焼き付いて離れない。

 ベッドに横になり、明日のことを考えようとしても、浮かんで来るのは岬のことばかりだった。
 岬の気持ちが自分にないと分かっていても、好きで、諦められそうになくて。ただ見ているだけで幸せな気持ちになる。
 打ち明けて気まずくなるよりは、岬の想いごと見守ろうと思った。

 それなら、側にいられるはずだ。

 食堂で、俺の向かいに座る翼に合わせて、岬もその隣に座る。
「昨日はごめんね」
頭を下げる岬に、翼が続く。
「気にするな。菓子は片付けてしまってあるから、今晩も来て良いぞ」
「ありがとう」
今度は翼が返事をした。岬がやかんを取りに行った隙に、翼に小声で囁く。
「それより、良いのか?岬まで俺と話してて・・・」
俺はチームで嫌われ者を演じている。元々チームと壁のあった翼はともかく、岬は巻き込むべきではないと思っていた。
「岬くんは分かってるよ。若林くんのことが心配みたい」
お前がそれを言うのか?岬に誰より構われているお前が。何だか気に食わず、翼の頬を引っ張ってやった。
「ひどーい!!」
翼が膨れても、俺の気が晴れる訳ではない。おまけに、翼は戻って来た岬に、俺につねられたと言い付けやがった。
「・・・翼くん、何したの?」
岬はキョトンとして、それからおもむろに言った。
「えー、俺何もしてないよ-!岬くんまでひどいよ!」
「でも、若林くんってそういう悪戯しないと思うけど」
岬はそう思ってくれているだろうが、俺だって昔は石崎と張り合ったこともあるし、翼の挑戦状にバカみたいに腹を立てた。だが、岬の前では頼りがいのある奴でいたいし、そう振る舞って来た。
「それで、若林くんはどうしてそんなことしたの?」
笑顔のまま、岬は尋ねて来た。出来るだけ表情を変えないようにしていたつもりが、顔に出ていたらしい。
「本当、仲良いね」
岬は静かに言うと、湯呑みを並べ、お茶を注ぎ始めた。そっと目を伏せているせいで、まぶたの白さやまつ毛の長さが、目に付いた。

 俺のいるゴールは岬の駆けるエリアからは遠い。小さくしか見えない背中を慕うしかない。その隣で跳ねているのは翼だろう。岬と走る時は、翼も高く跳ぶ。それは二人にしかなしえないことで、俺は羨望の眼差しを向けることしかできない。

(つづく)

拍手ありがとうございます。
うちではいつも翼くんが「若林くん、ずるーい」と言っている印象があるので、今回は若林くんが翼くんに八つ当たり、を書いてみました。
仲の良い三人って案外書いていないんだな、と実感しました。

何故か三人組というのが結構好きらしく、別ジャンルでも「主人公たち三人組」を書いている印象があります。
(そして、主人公以外の二人が体格差CPという構図に弱い様子)
これ、何属性っていうんでしょう・・・。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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