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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
お題:「じゃあ、手握ってて」
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

本日も xxx-titlesさまよりお題をお借りしています。 お題一覧はこちら

 レセプション会場から逃亡を図り、無事に成功した若林と岬であったが、行き先は合宿所。ホテルを取るつもりだったが、Jrユース大会に沸くこの辺りには空室などなく、そう遠い距離でもないため、歩いている。
「なかなか逢えなかったろ?」
勝利の実感が胸にある内に、岬に逢いたかった。泥だらけになって掴んだ栄光を、熱い内に喜び合いたかった。
 今夜会いたいという若林の言葉に岬が賛同して、秘密の逢瀬となった。
「うん。こうしてると三年前を思い出すね」
三年前の決勝戦、傷だらけの状態で、支え合った。その時からまたこうして共に戦うことを運命づけられていたに違いない。そして、喜びを分かち合うことを。
「また、決勝戦だもんな」
いつも二人が会うのは決勝戦で、この後には別れが待っている。それはまるで、定められた運命。
「若林くんと一緒に戦えて良かった。ありがとう」
「こちらこそ。お前のフォローはありがたかった」
岬は常に、チーム全体を見ている。自分がシュートを決めたい仲間が多い中で、それよりもチームが勝つことを見据える岬の存在は、若林にとっても心強い。
「君なら守りきってくれるって知っているから」
ほの暗い町にぽつぽつと灯る明かりの下を二人で歩く。岬の穏やかな声が、その明かりと同じように暖かくて、若林は胸を打たれる。
 一緒に戦えないかと思っていた。自分はチームの勝利のための捨て駒になっても良いと思っていた。それでも、願いはかなった。
「嬉しいね」
岬が小さい声で言った。フィールドではあんなに頼りがいのある背中も、こうして肩を寄せると、驚くほど小さい。
「・・・ああ。だから、お前も笑えば良いんだぜ」
川風に細いタイを揺らして、川面に揺らめく光を眺めながら、岬は歩く。
「うん・・・。でも、みんなともうお別れかと思うと淋しくて」
祭りが終われば、後には静寂が残る。フランスに独り残る岬の心中は容易に察することができた。岬にとって、決勝戦は別れ。
「次また全日本で戦う時に、会えるぜ?みんなとも俺とも。俺のチームに来るなら別だけどな」
ピエールのスカウトの上前をはねて、若林は微笑む。
「走ってたらすぐだ。な?」
盗み見た岬の横顔はほの白くて、祭りの後の寂しさを感じさせた。
「じゃあ手握ってて。お願い」
試合中の岬は、何も怖くないかのように見えるのに。手に伝わる小刻みの振動に、岬にしては暖かすぎる手。勝利の喜びが、寂しさをいっそう駆り立てる。岬がこうして甘えることが珍しくて、若林は与えられた手を強く握った。
「俺が、いる。だから、お前は一人じゃない。そうだろ」
頷いた岬に、若林は少し赤くなったまぶたに気づかぬフリで、キスを落とす。
「だから、俺だけ見てろよ」
淋しいなんて言わせはしない。息をつく間もなく、愛してやる。

(おわり)


拍手ありがとうございます。
ふがいないです。
「決勝戦しか一緒に戦えない運命」って切ない、を書きたかったつもりが。
単なる昨日の続き、みたいなことにするつもりはなかったんですけど。

from past log<2008.12.14>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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