※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 日本に戻ってから、若林くんからよく電話がかかるようになった。 「国際電話だし、お金かかるよ?」 と話しても、若林くんは気にする様子もない。 「俺が岬と話したいんだから、良いんだ」 と電話の向こうで笑うだけ。それで、お互いに他愛のない話をする。
元々は、そう親しかった訳でもない。ヨーロッパで僕が会いに行った。ただ、それだけの友達だ。
僕がフランスを離れることになった時、若林くんに連絡をした。 「・・・寂しくなるな」 若林くんは残念そうな口ぶりで呟いた。でも、南葛でもドイツでも、若林くんは人に囲まれているイメージが強い。Jr.ユース大会の時も、本当のことが分かった途端、彼の前には人が集まって、僕は近付けなかった。
そんな若林くんだけど、どこか寂しそうだと昔から思っていた。ドイツを最初に訪ねた日にそう話すと、若林くんは口元を綻ばせて、僕を見た。 「だから、俺はお前が好きなんだろうな」 その笑顔で、若林くんは人を集めているに違いないと思った。それ位魅力的な笑顔だった。 でも、それ以上に若林くんの言葉が気になって、僕は若林くんを見返す。 「からかわないでよ」 会いに行ったから誤解されたのかも、という気持ちがあって、つい語気は荒くなった。若林くんはまっすぐに僕を見て、落ち着いた声で言った。 「お前が好きなんだ。からかったりするもんか」 ・・・若林くんが人をからかったりする印象はない。それでも、好きだなんて聞いてしまったら、きっとこの淡い気持ちが動かされてしまうから。君を好きになってしまうから。 「ありがとう、嬉しいよ」 僕は友達のままの言葉を交わして、気づかないふりをした。
若林くんは大体夜に電話をかけてくる。向こうは夕方の時間だ。特に若林くんが休みの日には、結構長く話す。 「休みになると、岬の声が聞きたいんだよな」 「何だよ、それ・・・僕、明日朝練なんだよ」 「じゃあ、岬が眠くなるまで。なら良いだろ?」 布団の中で電話の声に耳を澄ます。父さんがいない時は、ハンズフリーにしたりしている。ひとりきりだから、電話越しと分かっていても、人の声は安心する。
特に、若林くんの声は。
あの男らしい顔や頼もしさからすると意外なほど、若林くんの声は優しい。静かな声で、落ち着いた口調で紡がれる言葉には、本当に安心する。 「・・・眠くなってくるよ」 文句、というよりは相談のように呟くと若林くんの笑い声が聞こえた。 「寝て良いぞ」 「だめだよ。若林くんがせっかく話してくれてるのに、悪いよ」 最初の内はそう言っていたけれど、そのうち眠気に負ける日が出てきた。 「岬、疲れてるみたいだな」 次の日、練習の合間らしい電話でそう言われた時には、顔から火が出るかと思った。確かに、電話を切った覚えはない。 「ごめんね、寝てしまったみたい」 「でも、何も口走らなかったぞ。楽しみにしてたのに」 冗談っぽく言われて、少しホッとした。気が緩んでしまったせいか、それから何度か寝てしまう日があった。 「テスト勉強が大変だって言ってたもんな」 「練習頑張ってるみたいだな」 責めるどころか労いの言葉をかけてくれ、電話を続けてくれる若林くんの気持ちが、嬉しくて仕方なかった。
だから、気になった。僕が寝た後、若林くんがどう電話を切るのかが。
いつも眠くなる時間に、布団から起き上がった。しばらく、声を出さずに、耳を澄ます。 「岬、寝たのか?」 潜めた声が、囁いた。 「・・・今日も頑張ったな」 若林くんの言葉はいつも通り優しい。それだけで疲れが軽くなる気がするようだ。そこで終わりかと思った時、若林くんが言った。 「・・・なあ、そろそろ俺のこと好きになれよ」 それは甘くて切なくて、うっとりするような響きだった。 「おやすみ、岬」
電話が切れた後も、しばらく動けなかった。胸が苦しくて仕方なかった。
若林くんが好きだ。
急いで、携帯電話の履歴を呼び出した。履歴を埋め尽くす番号をコールする。
「岬、どうした!?」 電話に出た若林くんの声は慌てているかのようだった。確かに今まで僕がかけ直すことはなかった。それくらい、甘えてしまっていた。気持ちに蓋をするために、色々見ないふりをしていた。 「若林くん、あのね、好きだよ」 早口で、それだけを告げて電話を切る。
直後に若林くんから電話があったことは言うまでもない。 「今の電話、本当か!?」 繋がった途端に、勢いよく聞く言葉。その声が不安そうに聞こえたのも、何故か嬉しかった。 「・・・うん」 それしか言えなかった。息をするのも苦しい位、胸いっぱいに詰まっているのは、たぶん君への想い。 「きっと睡眠学習が効いたんだな」 「へえ、そんなことしてたの?ふーん」 いつも通り冗談を交わしながらも、いつもとは違うのは、僕たちの心の距離が変わったせい。 「前よりもっと会いたくなった」 呟く若林くんに、僕もだよ、と言葉を重ねて、ドキドキで眠れない夜は過ぎていった。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 今回は元ネタありです。
「笑える話」で 「最近リア友の男と通話しながら寝落ちするのが日課で いつも朝起きたら通話切れてるから 相手は私が寝な後どんな風に通話切ってるのかなって思って 寝たフリしてたら 「おーいもう寝たかー?・・・寝てるな。明日もしよな。好きだよ。おやすみ」 って言ってて死ぬかと思ったって妄想してたらもうこんな時間」 というネタを知り、源岬なら、普通にありうる話です、と書いてみました。いつも通りでした。
6月なので、松山くんや三杉くんの出る話を書きたいな~と思って、書き始めたのが何故か必殺ネタになってしまったので、クレスリウム王国さまにお引き取りいただきました(もうUPしていただいています)。銀月星夢様、毎度申し訳ございません。当初の予定通りにはいかず、源岬寄りになりました。
私信、これからメール返信します。遅くなってすみません。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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