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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
つつじ
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

「誕生日プレゼントは何が欲しい?」
若林くんからの電話に、そう言えばその季節だと改めて認識する。
 ちなみに、この問いは毎年繰り返されている。答えなかった一昨年は、とんでもない量のプレゼントが送られてきて、僕は深く後悔した。だったら、と品物名で答えた去年は、とてつもなく高価な商品が送られてきた。つまり、僕は『もらっても負担にならない品物の商品名』で答えなければいけないらしい。なかなかハードルが高い。
「・・・ちょっと待ってね・・・後でメール送るよ」
本当のところは、若林くんのチームのバックが欲しいけど、外に持って行けないから、勿体ない。何か考えることにして、保留してもらう。
「ああ。分かった。・・・今年は忙しくてすまない」
「良いよ。僕も忙しいから」
お互いの都合が折り合ったら、遊びに行くという話はしていた。今年は、高校最後の総体だと思うと、できるだけ練習したかったし、ちょうど良い。ちょっと寂しいけど、こうして電話で声が聞けるだけで、心は弾む。
「そうそう、今日は君の家のつつじがきれいに咲いてたよ」
学校帰りに若林くんの家の前を通ると、門の外のつつじが花盛りだった。赤にピンクに白と色とりどりながら調和している花々に目を奪われた。
「つつじ、といえば思い出すな」
「うん」
若林くんの言葉に、小学生時代を思い出す。若林くんを初めて意識した日のこと。

 僕が南葛に引っ越したのは4月も半ば過ぎだった。対抗戦での興奮も冷めない内に、南葛SCの選考が始まった。最初はいつ引っ越すか分からないからと断っていたけれど、翼くんに誘われて、僕もテストを受けに行くことになった。
「だって、岬くんも一緒の方が楽しいよ」
そう言われて断り切れなかったのは、僕も翼くんとのサッカーが楽しくて仕方なかったからだ。そして、その場には若林くん達修哲のみんなもいた。
「お前も来ていたんだな」
「うん」
翼くんに声をかけた後、若林くんが僕に言った。僕が頷いたところで、石崎くんと話していた翼くんが混じって来て、僕の腕をつつく。
「若林くん、岬くんもうすぐ誕生日なんだよ」
「翼くん、ちょっと・・」
翼くんの意図は分かっていても、いきなりそんな話を持ち出したのを諌めようとしたところで、若林くんと目が合った。若林くんは僕が困っているのをどう解釈したのか、笑顔になった。
「じゃあ、俺の家でパーティーするか?」
「いいの?若林くん!」
「で、いつだ?」
「5月5日だって。こどもの日って、岬くんらしいよね」
「祭日なら朝10時で集まれるな」
僕が戸惑っている間に、若林くんと翼くんは勝手に話を進めている。着々と段取りができる様子に、僕は血の気が下がる気がした。
「ちょっと待って!」
慌てて割って入った。確かに翼くんは友達になってまだ日も浅いけど、親友だと言っても良い。でも、若林くんはまだよく知らない。サッカーがすごくうまくて、たぶん小学生では日本一のGKで、つつじのきれいな家に住んでいる、優しくて頼りになる、くらいしか。あと、頭が切れて、決断力と行動力があるのは今分かった。
 でも、そこには甘える理由はまったくない。
「そうじゃなくて、あのつつじの庭を見たいって話だったんだよ。翼くんがそれなら誕生日にかこつけて頼んだらって言ってくれてただけで」
門の外の庭もきれいだけど、柵の向こうにもつつじが広がっている場所がある。あの庭がどこまで広がっているのか。道から見えているだけでも、燃えるような赤紫色から、鮮やかな赤、淡いピンクまでうっとりするくらいきれいだ。それを学校帰りに話したら、翼くんは教室の後ろの掲示板に貼ってある僕の誕生日カードを思い出したらしくて、そう言い出したのだ。それっきり忘れていると思っていたのに。
「じゃあ、別に俺の家でパーティーでも変わらないだろ?」
「そんなに迷惑かけられないよ」
若林くんは本当に鷹揚らしい。修哲チームの中の態度でもそう思っていたけど、度量が大きい。そして、僕はそんなことはあっさり受け入れられない。
「じゃあ、俺が開きたいからそうするな。翼、そっちは声かけておいてくれ」
「うん」
僕は困るんだけど。翼くんもあの調子ならサッカー部全員に声をかけそうだし。
「10時に来いよ」
楽しそうな声で、若林くんは言った。また反論しようとしたところで、時間になった。

「若林くん、ちょっと良い?」
昼の休憩に、若林くんを呼び出した。みんなでお弁当を広げているから、そこに乗り込んでいくのは勇気がいることだったけど。若林くんはもう食べ終わったらしく、ゆっくりとお茶を飲んでいた。
「良いぜ。朝の話か?」
分かっていたんだ。立ち上がって、歩み寄って来た若林くんと、少し離れた木の陰に入った。
「あのね、さっきの話だけど。僕はいつ引っ越すか分からないから、そんなことはしてもらえないよ」
こうして二人で立つと、若林くんは随分背が高い。大人っぽい雰囲気もあって、とても同い年には見えない。
「岬、修哲と南葛と今まで26回対抗戦をしてきたんだ。だが、俺達とお前と翼はこのチームに受かるだろうな。急にうまくやれると思うか?」
ゆっくりと話す若林くんの声からは、思慮深さがにじみ出ている。僕の誕生日はみんなが集まる口実としては、本当に都合が良い。
「若林くんってすごいね。僕そこまで考えていなくて・・・」
これが、人の上に立つということなんだと感じた。修哲のみんなが慕い従うはずだと、僕は自分の幼稚さが恥ずかしくなった。木陰で赤くなった顔だけを見られないのが救いだ。
「・・・違う、後から考えた言い訳だ。岬の誕生日なら、祝いたいと思っただけだ」
若林くんは、急に早口で言うと、みんなのところに戻って行った。その横顔が赤くなっているように見えたけど、自分の顔の赤さが気になって、それどころではなかった。

「あの時、誕生日パーティーというより、お前が俺の家に来てくれるのが嬉しくて、緊張したんだぜ」
電話の向こうで笑う若林くんに、僕も笑みを誘われる。
「僕も、どんな顔して行ったら良いのか、分からなかったよ」
翼くんと誘い合わせて、何とかたどり着いたのだった。初めて入る若林くんの家は想像していたよりもきれいで、つつじの庭は周囲を囲む緑の鮮やかさもあって、目に焼き付いた。その時の若林くんの顔が思い出せないのは、きっと目を合わせないようにしていたせい。
「可愛かったぜ。俺、ずっとお前見てたもん」
また、そんなことを言うのだ、若林くんは。でも、そんないつもの台詞でも、僕の心はまた踊らされる。あの時に、心のどこかに君が住み着いてしまった。
「・・・もう、若林くんは」
きっと、これから先も、同じ会話を繰り返すのだろうと思った。そして、そんな誕生日が続くように、僕は願った。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
先日「星の光」を書いたので、それに対応するようなのを書こうと思い立って、約1時間で書きました。誤字脱字はいつものこと、どうかご寛恕ください。
岬くんの誕生日を知って、祝いたくなる若林さん、も書けてよかった。
誕生日おめでとう、をどのタイミングで言おうか考え中です。

以下、拍手お礼。
桐乃さま、拍手ありがとうございます。
ついにブログを始められたとのことで、おめでとうございます!
リアルサッカーにもお詳しいとのことで、素敵!の一言です。
「純粋な岬君と男らしい若林君」というお言葉に感激しました。こちらこそ精進しますとも。
また、お伺いさせていただきます。
桐乃さまのブログは以下の通りです。
COLORSさま

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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


コメント
言い訳の言い訳
何と言う甘酸っぱさ!!!!
超絶初恋の味がします!!!
岬ちゃんに素直に褒められてバカ正直にゲロッちゃう若林さんにも萌えました!!v-344
きっと若林さんの視界には、
つつじよりも綺麗に愛らしく咲いてる岬ちゃんが………v-308
[2015/05/04 01:07] URL | みちちんちこ。 #ntbreMG6 [ 編集 ]

Re: 言い訳の言い訳
みちちんちこ様。コメントありがとうございます。
はっ、確かに「言い訳の言い訳」ですね。
実は「祝いたい」ということもアピールしたいんだと思います。何しろ、初恋ですから。
あと、最初はつつじの蜜をちゅうちゅう吸う岬くんも想定していたのですが、若林くんがエライことになりそうでやめました。違う話にならなくて良かったです。
[2015/05/05 23:05] URL | 真          #- [ 編集 ]

つつじちゅうちゅう!!
つつじちゅうちゅうはヤバイんですけど!!
しかも甘いのならまだしもハズレ吸っちゃって
「苦い……」とか岬ちゃんに言われたら
若林さん尿意もないのにちょっとお手洗いですよ!
[2015/05/06 11:49] URL | みちちんちこ。 #ntbreMG6 [ 編集 ]

Re: つつじちゅうちゅう!!
みちちんちこ様~。
やっぱりカットして正解ですよね。
目の前で唇をすぼめて、目を閉じるなんて。
でも、「苦い」発想はありませんでした。さすが!
苦くて涙目になっている様子を想像したら、若林くんの気持ちがよく分かりました。
つつじちゅうちゅうは禁止とさせていただきます。
[2015/05/06 21:57] URL | 真          #- [ 編集 ]


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