※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「桜、きれいだね」 この時期に日本で会わなければ、花見なんて思いつきもしなかった。闇の中にたわわに花をつけた枝を伸ばし、桜は咲き誇る。咲いたと思えばすぐに散る花なのに、普段は外国に住む俺達さえ、春と言えば桜を思い起こす。 「ああ」 桜の木の下で、岬もゆっくりと腕を伸ばし、桜を見上げた。 「何か、ありきたりの感想しか出て来ないや・・・あんまりきれいで」 こうして、二人きりで会うのは久しぶりで、嬉しいという気持ちと、この時間が終わって欲しくないという思いが相半ばしている。 「良いんじゃないか、当たり前の感想で」 会いたかった。会えて嬉しい。離したくない。お前といたい。 渇望は、単純な言葉に収束している。桜の春も短いが、逢瀬はもっと短い。 「そうだね。こうしてお花見できただけでも良かったよ」 岬は一つのびをすると、右手を俺に伸ばして来た。その様子を見ているだけで、リラックスできたようだと安堵する。 「じゃあ、そろそろ行こうぜ」 反対に腕を引くと、岬は少し口元を尖らせて睨んでみせた。 「桜も堪能したし、お前との時間を堪能したいんだがな」 桜と岬、を愛でるのも悪くはないが、ここで抱き寄せたら、怒るのは目に見えている。折角の逢瀬にそれはあんまりだ。 だが、岬の反論は予想外だった。 「若林くんと桜似合うのに」 そんな可愛い苦情は、唇ごと塞いでしまいたい。髪にかかった桜の花びらを取ってくれている指先を捕まえる。 「お前こそ似合うから・・・早く触れたいんだ」 岬の髪についた花びらを摘み、潰さないように唇にくわえた。今奪えないキスの代わりに。 「・・・もう、仕方ないね」 岬は踵を返し、歩き出した。遠くなった桜を時々楽しむように振り返る。 これ以上桜の時間が延びなくて良かった。頭上の桜も、お前の瞳の中の桜も、心の中の桜さえ奪ってしまいたくなったかも知れない。 「君が桜に浮気する前に帰るよ」 俺の悪戯を咎める小さな呟きは胸に刺さるようだった。射すくめられるままに、抱き寄せた。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 昨日は休みを取れたので、花見兼日帰り温泉に。それで花見の話になりました。何故かいつも夜桜を書いてしまいます。好みですかね?
更新作業中に寝てしまったので、変な時間の更新ですみません。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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