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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
2-4:この気持ち何だろう?と本人に聞いた
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

お題「恋のはじまり」。お題はTOY様よりお借りしました。

「・・引っ越すことになったよ」
電話の向こうの声は、明らかに元気がない。顔が見えないから笑顔でごまかせない分、かえって表情が伝わるようだと、受話器を握る手に力が入った。
 Jr.ユース大会が終わった後に、もしかしたら、という話をしてはいたのだが。
「・・・ブラジルじゃないよな?」
「そのネタ好きだよね?違うよ。日本に帰るんだよ」
笑い声を立てたのは、ほんの一瞬だった。岬は息を吸い込み、それからハッキリと答えた。予想外のことに俺は言葉を失い、岬は小さく息をついた。
「日本のどこだ?」
「南葛だよ。父さん、富士山が描きたいんだって」
南葛、と聞いてあの夏の思い出が胸に蘇る。旅立つ岬と共に、過ぎ去った夏。
「じゃあ、また会えるんだな?」
俺の方がほとんど日本に帰ってはいないのに、安心した。よく知った町の中を、よく知った友達に囲まれて岬がいる。それだけで、張り詰めた緊張が解けた気がする。
「いつまで南葛にいるかも分からないよ?」
「また連絡くれ・・・それより、日本に帰るまでに一度会おう?いつなら空いてる?」
矢継ぎ早に質問を繰り出す俺に、電話の向こうの岬が一瞬息を飲み、それから一度息を吐き出してから声を出した。その声が少し明るく聞こえたのは、気のせいであってほしくない。
「ん・・・今週の土日なら」
岬の気が変わらない内に、カレンダーを確認し、慌てて返事をした。

 岬の家の中は、更にさっぱりしていた。元々荷物を増やさないようにしていたらしいし、家具付きの部屋を借りたのは賢明だ。
「もう、片付け終わったのか?」
「うん、後は今使っているものと父さんの絵の具くらい。明日までスケッチに行ってるから、片付けるのは明後日かな」
ニコッと笑った顔のまま、岬は話し続けた。日本人学校での送別会は終わったこと、もう飛行機の切符も取ったこと。
 その間、俺は黙って聞いていた。・・・当分この声を聞けない。この、顔は見られない。胸に焼き付いているとは言っても、こんなに辛そうな笑顔が最後になるのは悲しい。まるで仮面のようだとすら思った。
「お茶、冷めてない?いれなおすよ」
俺の沈黙をどう捉えたのか、岬は席を立った。ポットを取りに俺の横を通っていく、岬の腕を振り返りもせずに掴まえた。
「若林くん、何か気に入らないの?」
そのまま立ち上がり、引き寄せた俺に、岬は顔を上げて咎めるように尋ねた。
 顔に出したつもりはなかったが、岬には伝わってしまうのだろう。そういう感情の機微を見るのに長けた岬らしい。だが、無理して笑顔を作っていることが、俺に分からないとでも思っているのだろうか。
「無理に話さなくても良いんだぜ」
強引に抱き寄せても、もう抗議の声はなかった。岬はそのままもたれ掛かるように、頭を倒した。その肩が揺れているように思えたのは、願望か気のせいか。細い肩に手を回して、しっかりと支えた。
「日本なんだろ?いつでも駆け付けてやる」
うなだれているかのように伏せられた視線、細いうなじが目立つ。耳元に囁く言葉に、岬は低く呟く。
「・・・若林くんに僕の気持ちは分からないよ」
やはりさっきまでの明るさは虚勢だったらしい。疲れたように気力の失われた声に宿る諦め。
「じゃあ、お前には俺の気持ちが分かるのか?」
静かに問い掛ける。岬が一瞬息を殺した。岬の戸惑いを感じながらも、苦しい胸の中を吐き出すように、ゆっくりと尋ねた。
「教えてくれ、岬。お前が世界のどこにいようと会いたいんだ。この気持ちは何なんだろうな?」
会えば言葉をかわし、食事をするとはいえ、こんなに近付くことはそうなかった。俺の吐露した想いに岬は身をすくませている。
「・・分からないよ」
微かな声は震えるようだ。思わず手を放しかけたところで、少し離れた体を、逆に掴まれた。
「でも、離れたくない」
ぎゅっと引かれた袖に、心までをも掴まれた気がした。
「岬」
見下ろした顔は、涙で滲んでいる。切なげに見上げる瞳は潤み、薄く開かれた唇は濡れているように見えた。誘われるように喉が鳴り、やっと搾り出した声は、掠れてしまった。
「俺もだ」
そのまま飢えるままに求めた唇は、柔らかかった。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
恋が始まってしまったので、このシリーズは一旦終わって、「甘い恋」に続きます。
書いている内に、どうしてこうなったのか未だに分からなかったりします。

以下、拍手お礼。

snow様、お久しぶりです!
こちらこそ、ご無沙汰してしまっておりましてすみません。
相変わらず進歩のない駄文ですが、萌えの補給にして下さっているとのことで、嬉しいです。
そうなんです!いつもはグイグイな若林くんが岬くんとの関係を壊したくなくて、そっと接するというのが好きなんです!
なかなか表現できていないですけど、読み取って下さってありがとうございます♪
もっとかっこいい二人を書けるよう、精進します。
こちらこそ、snow様の次回作楽しみにしております!源岬について、めちゃめちゃ語りたいです!!

桐乃様、ありがとうございます。
このシリーズについてのコメントが素敵すぎて、そんなに素敵な話だったかと思わず読み返してしまいました。
・・・残念ながら、いつもの話でした。残り一遍楽しみにして下さっていたのに、こうなってしまいました。すみません。
なかなか思うように書けませんよね・・・。いつも迷走しているので、お気持ちは分かります。お互い焦らず、のんびりと、でも二人はイチャイチャ、で参りましょう。
リンクのご報告もありがとうございます。大歓迎です。折角ですので、こちらもリンク貼らせていただきました。これからもよろしくお願いいたします。COLORS さま
あと、プレゼント予告嬉しいです♪でも、どうかご無理なさらずに、自分のペースでなさってください。それで、余った分はぜひ!!楽しみに待ってますm(_ _)m

拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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