※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 昨日から、岬が遊びに来ている。日本に帰っても絶対に応援に来てくれ、と言った甲斐あって、わざわざ日本から駆け付けてくれたのだ。
・・・期待しても良いよな?
期待を込めて見つめても、岬はいつもと変わらない柔らかい笑顔で「何?」と首を傾げてみせる。ポーカーフェイスなんて言葉が正しいのかはともかく、鉄壁のガードだと思う。多分わざとだと思うが、しっぽも掴ませないで、楽々とかわす辺り、非常にらしくて、悪くはないのだが。
目覚ましが鳴って、そんなことを考えながら起き出した。着替えてスリッパを引っ掛け、廊下を歩く。昨日着いた岬は疲れているだろうし、起こすのも気がひける。起きて来るのを待とうか・・・と考えていたちょうどその時、客間のドアが開いた。 「あ、おはよう。若林くん」 「・・・ああ、おはよう」 対応が遅れた。まだ寝ぼけているのかと目をこするが、視界は変わらない。 「洗面所、あっちだよね?」 「ああ」 洗面所に向かう岬の後ろ姿を見送りながら、俺はもう一度我が眼を疑った。岬の頭にはもう一対の耳、そして腰にはしっぽが付いていた。 「な、な、何、これっ」 珍しいことに驚き慌てる岬の声が聞こえて来たのは、それからすぐだった。
「若林くんっこれ・・・」 洗面所に向かうと、顔色を失った岬が胸に飛び込んで来た。 「お、落ち着けっ」 ピンと立ったままの犬の耳から、岬の緊張が伝わる。それ以上に震える肩、白いを通り越して青白い顔。しっぽは消沈を示すように力なく垂れ下がっている。 「大丈夫か?」 震える肩を抱く。細い肩の動揺が少しずつ収まり、岬は顔を上げた。 「・・・何とか」 岬はスッと首を伸ばし、顔を上げた。吹っ切れたような仕種が余りにきれいで、俺は一瞬息を飲む。可愛い顔はしているが、精神的に強い奴だ、こいつは。 「とりあえず、飯食おうぜ。ひどい顔色だぞ」
岬の肩を抱き、キッチンに向かう。洗面所から戻って来た岬は少し落ち着いたらしく、至って普通だった。耳としっぽが付いている以外は。 それにしても可愛いなと岬の頭の上に付いている耳を見る。三角の耳は白い犬のものらしい。おそらくしっぽも。それが会話する度にフリフリと揺れるものだから、普段よりも更に岬の尻を視線で追う羽目になる。 「・・・しっぽも付いてたんだ・・・」 「俺もさっき気付いた」 嘘だ。キュッと上がった形の良い尻に、しっぽが付いているのは可愛くて、つい見てしまう。しっぽを見ても、まして腰や尻を見るのも問題がある。これはまずい、と頭の上の耳に意識を向けた。 「とりあえず昨日のパンを食おうか。折角買ったんだし」 「そうだね。楽しみにしてたんだ」 岬が嬉しそうに笑うと、岬の後ろでしっぽが暴れるみたいに揺れた。岬は自分のしっぽが揺れたことに気付き、慌てて凝視するが静まる様子はない。 「っもう、何だよ、このしっぽ!」 無理に押さえても、しっぽの先がくいくいと動く。岬は恥ずかしそうに顔を真っ赤にして、しっぽを掴みながらテーブルについた。 「気にしないでね」 気にするに決まっている。何しろこの耳としっぽを見れば、岬の本心が分かるらしいとくれば。
パンを食べ始めた頃、岬は明らかに気もそぞろだったが、途中から落ち着いたようだった。 だから、いつもより話した。応援に来てほしい試合のこと、スタジアムの芝生や歴史のことまで話すと、岬は時々パンをちぎる手を止めて聞いてくれた。 「・・・すごいチームにいるんだね」 岬は少し寂しそうに視線を落とす。話を聞いている間ピクピク動いていた犬耳も、元気なく垂れている。ジョンの反応に慣れているおかげで、本当に分かりやすい。・・・犬耳で助かった。他の動物の耳よりは反応が分かりやすい。まあ、どんな耳がついていても、岬なら可愛いに決まっているが。 「チームはすごいが、俺はまだまだだ。お前に応援に来てもらわないと心細い位だし」 「嘘ばっかり」 クスクス笑う岬に同調するように、犬耳が揺れる。ジョンのことを思い出して読み取った耳は、ぴんと立ってはいるが、緊張している様子はない。
朝食を終えて、片付ける間、岬のしっぽは揺れ続けた。特に何をした訳ではなく、一緒に食器を片付けただけだ。岬が洗ってくれた皿を、俺が食器棚に戻す。 「普段使わない上等の皿なんだぞ。岬が来てくれたから出したんだ」 拭きながら話す俺に、 「もう、冗談はやめてよ。緊張しちゃうよ」 笑いながら岬が皿を手渡してくれた。岬に手伝ってもらうのは、少々気が咎めていたが、岬が嫌がっていないのもよく分かった。むしろ、楽しんでくれているらしいことも。
俺は、岬が好きだ。決して可愛らしい姿だけではない。いつも誰にでも優しいくせに、自分には厳しく、人に甘えず背を伸ばしているようなところも、実は寂しがりなところも、意地っ張りなところも、好きだと思う。ただ、犬耳に困る岬ときたら、とにかく可愛らしくて、つい気になってしまうのは仕方ない。 視線を向けた俺に、岬が困ったような笑顔を返す。 「あんまり見ないでよ。恥ずかしいから」 そう言う岬の頭の上で、可愛らしい耳がぴょこぴょこ動く。そっと手を伸ばして、白い耳に触れた。 「手触りも本物だな。感覚はあるか?」 「うん。触られてるって感じがする」 振り返った岬の頭に触れたくなる気持ちを抑え、名残惜しい手を離す。その時、パタパタ揺れていたしっぽの動きが止まった。 「あっ」 「あの・・・別にこれ、意味ないから」 うなだれるように垂れ下がるしっぽに気付き、岬が弁解する。 「そうなのか」 口では賛同を装いながら、手は更に伸ばした。頭の上の耳ではなく、前から触ってみたかった髪に、撫でる。 「髪、きれいだよな」 「な、何言って・・・」 岬が目を見開く前に、素直なしっぽがパタパタと返事をする。 「違うから・・・」 岬の否定も意味をなさない。しっぽも耳も嬉しそうに意思表示をし、何より桜色に色付いた頬。 「可愛いな」 口にせずにはいられなかった。岬は弾かれたように口を押さえ、その顔はみるみる朱に染まる。 「からかわないでよ」 「俺は本気だ。思ったことしか言わない」 口では否定しても、それを裏切る耳としっぽに、岬は小さく息をついた。 「岬、好きだ」 滑らかな頬に手を添えても、岬はもう抗わなかった。いくら知らないふりをしてかわそうとしても、本心をさらけ出す存在があるのだから観念するしかないのだろう。 「・・・君のこと、嫌いじゃない」 動揺の色を残した瞳で、岬は見上げた。普段は優しい笑みを湛えている顔が、余裕なく見えるだけで、俺はそれが本心だと思った。耳としっぽを見るまでもなく。 「嫌なら、しっぽで知らせろよ」 抱き寄せた時に岬の唇から漏れたのは、吐息かため息か。観念したように目を伏せ、岬は俺に身を預けた。 言葉以上に雄弁な肯定と、僅かに色づいたうなじは、犬耳としっぽ以上の破壊力だった。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 岬くんに耳&しっぽをつけたくなってしまいました。若林くんが解読しやすいように、犬耳です。 話よりも、ビジュアルを想像していただく方に重きを置いております。どうぞ自己フォローでお願いいたします。
クレスリウム王国さまで岬くんお誕生日記念SSを掲載いただきました。 「若林先生」シリーズは、小学生5年生の岬くんが担任の若林先生のことを好きになり…という話で、他の方のサイトに連作短編とはいえ、連載してしまうという暴挙をしていたのですが、管理人の銀月星夢様の寛容さに甘え、この度完結しました。最初の作品「甘い玉子焼き」は何と2008年でした。その間に、コラボや番外編等合わせて20話ほど。・・・寛容さに甘えるにも程があります。本当にありがとうございました。
以下、拍手お礼。 くるみ様、コメントありがとうございます。 時代劇のつぶやきに反応ありがとうございます。反応いただけて嬉しいです♪ 時々萌えの発作が来るので、その勢いで書きたいと思います。・・・まだ全体の3分の1ですが。 頑張ります! でも期待せずにお待ちくださいませ。
拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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