fc2ブログ
今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
2-3:一番は俺だと言わせたい
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

お題「恋のはじまり」。お題はTOY様よりお借りしました。


 岬と再会して、しばらく経った。岬は時々遊びに来るし、俺も時々会いに行くようになった。

「また来てくれたんだ!」
急に訪れた俺を、岬は笑顔で迎え、それから立ち止まった。一瞬暗い影が過ぎったように見えて、俺は岬の肩を掴んだ。
「岬、どうした?」
問いかけた俺を見上げて、岬は唇だけを笑みの形にした。
「何でもないよ。・・・父さんがスケッチに行くって散らかした後だったから・・・」
確かに岬の家にしては、雑然としている。いつもは少ない荷物を整頓してあるだけに、意外だった。
「それで片付けてたところだったんだ」
もっともらしい理由だが、それだけで笑顔を曇らせたとは思えない。いつものように室内に入り、岬の出してくれた紅茶を飲みながら、部屋を見渡した。
「あれ、この前ここに絵飾ってなかったか?」
趣味は悪くないものの壁紙の古びた感のする壁に、青の目立つ絵が飾られていた。かなり印象的な絵がないだけで、壁はぼんやりして見える。
「片付けたよ・・・父さんがいつ引っ越すか分からないなんて言うから」
いつもの淡々とした口調より、少しだけ感情を滲ませ、岬は早口に答えた。
「そうか・・随分印象が違ったから気になってな」
それも私感ではあるのだが、散らかったものを片付けた割には、部屋自体の荷物が少なくなっているのも気になっていた。これではまるで引っ越す前だと連想し、俺はつい岬の表情をうかがった。岬は俺の疑念に気付いたのか、机の中から絵を引っ張り出して来た。
「確かに殺風景かもね。やっぱりこれは貼っておくよ」
再び飾られた絵は、記憶よりも更に青かった。青というより群青の深い色合いに、日本のユニホームを思い出す。
「これ、岬が描いたんだろ?」
「どうして分かったの!?」
岬ははにかむように口元に手を当てながら、首を傾げた。女性的にも見える恥じらいの仕種も、岬には違和感がない。
「何となく、な。良かったら俺にも描いてくれよ」
「ありがとう。またそのうちにね」
大きな目をぱちぱちさせる岬はどこか嬉しそうだ。落ち着いた壁と岬の顔を見比べながら、俺は紅茶を一口飲んだ。
「それより、また引っ越すのか?」
「・・・うん、多分そうなると思う」
ためらいがちな口調で濁す岬からは、気が進まない様子が見て取れた。しばらくこの町に住み、最長記録を更新中だ、と聞いたばかりだった。
「もし引っ越すことになったら」
言いたいことはたくさんあった。だが、それを吐き出すのが岬の為になるとは思わなかった。ちょっと親しい友人、が言っていいことかどうか、判断にも困る。
「連絡くれよ。ブラジル以外なら会いに行ってやるから」
冗談めかして言った。ブラジル、が効いたのか岬は吹き出した。
「もう、やめてよ。変な所に入ったじゃない・・・」
軽くむせながら、岬が頬を膨らませる。ブラジル、ではないらしいと安心して、まだ睨んでいる岬に笑いかけた。
「それでどこだ?」
「パリ市内だと思うんだけど・・」
岬はあっさりと答え、ブラジルじゃないよ、と笑顔で付け加えた。だから俺も付け加えることにした。
「ちゃんと連絡しろよ?俺が一番だからな」
「はいはい」
仕方なさそうに答える岬は楽しそうで、どうやら引っ越しても連絡はもらえるようだと安堵した。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
転。
スポンサーサイト



テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


コメント

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


トラックバック
トラックバック URL
→http://sukinamono11.blog63.fc2.com/tb.php/1051-e709365b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)