fc2ブログ
今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
背中
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。
おそらく、「守ってあげたい」の後。

 送る、という若林くんの言葉に甘えて、合唱所から家路をたどる。そう暗くもないけど、街路灯の点り始めた街は、確かに夜の空気になり始めていた。
「若林くんこそ、大丈夫?」
「俺は慣れてる」
素っ気なく言って、足を速める若林くんを追い、それからふと気付いた。若林くんの背中を見たのは久しぶりだと。

 僕はMFで、若林くんはGK。敵対する時には向き合うし、味方の時には僕が背を向ける。若林くんの背中を見ることはほとんどない。広い背中は見るからにたくましくて、とても同い年とは思えない。

 あの時もそうだった。

 南葛に引っ越してすぐ、転校の手続きをしようと学校に行ったら、誰もいなかった。慌てて教えられた先に向かう途中で、若林くんに出会った。
 ボールをぶつけそうになった僕に、怒るでもなく注意しただけだった。謝った後道を尋ねた僕に、若林くんは「ついてこい」とだけ言った。その様子は落ち着いていて、てっきり年上だと思ったほどだった。サッカー上手い人だな。どこの中学だろう。黙って先を歩く背中を見上げて、追いながら、考えたのはそんなことだった。

 同い年だと知った後も、その感想はあまり変わらなかった。同い年だと知ってから、なおさらすごい、と思ったくらいだ。その背中に、どれだけのものを背負っているか知ったからかも知れない。
 今もそうだ。周囲に敵意を向けられ、悪役を演じてまでチームを強くしようとする覚悟も、思いも、この背中に隠して見せない。

「若林くん」
僕も足を速めた。いくつもの言葉を噛み殺し、胸の中に飲み込みながら、半ば走るように、大きな背中に飛びつく。
「み、岬っ!?」
さすがに僕の不意打ちでも若林くんは姿勢を崩したりはしなかった。ただ、驚いたように声が上ずった。
「・・・背負いすぎだよ」
「だからってお前まで乗っかることないだろ」
肩に手をかけ、もたれた僕を振り返りながら、若林くんが苦笑する。自分でも、僕らしくない所作だとは思う。人に甘えるのが苦手な僕が、甘えるふりをしているのだから、必死だ。
「じゃあ、一緒に背負うよ」
僕にはこの広い背中を包むことはできない。祈るような気持ちで背中に額を付けた時、不意に持ち上げられた。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
背負われた、と気付いた時には遅かった。まだ完全に暗くなりきらない街中でおんぶされるのは恥ずかしくて、僕はみるみる顔が火照ってくるのを感じた。
「お、降ろしてよ」
「お前の背中には羽がついてるからな。楽させてもらうぜ」
背中越しに聞こえて来た言葉は、半ば笑いながらだったにも関わらず、何故か苦く感じた。冗談で「天使」なんて言われることはあるけれど、それが本当だったら良かった。
「・・・うん」
広い背中で、強い肩を抱き、僕は祈った。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
「守ってあげたい」が異様に凛々しい岬くんだったので、心持ち可愛い感じに書きました。
いや、私が書くと可愛くはないんですが。よその可愛い岬さんに憧れます。

以下、拍手お礼。
桐乃様、いつもありがとうございます。
「幸せな時間」ありがとうございました。素敵なお話をいただいて、とても嬉しいです。
しばらくトップに置いておきたいところですので、今日の更新が本当に残念。
そして、「三人の世界」のコメントもありがとうございます。
3Mの力関係はどうしてもそうなりますよね・・・。じゃれて可愛いのが一番です。
これを更新してから、昔書いたらしい若林くん&三杉くんのSSを発見してしまい、
こっちを更新すれば良かったと後悔しました。
このコンビも桐乃様とかぶってしまっていたので、まあよかったのですが。
若林くん&三杉くん話素敵でした。
次のお作も楽しみにしております♪

拍手のみの方もありがとうございました。励みになります。
最近、昔の話を読んで下さる方、ありがとうございます。
自分でも気に入っていたけれど、忘れていた話を、読んで下さる方がいらっしゃるのは本当に幸せなことです。
自分では気に入っていた作品に拍手が入っていると、とても嬉しくて、頑張ろうと思います。
拙い作品が多いですが、少しでも楽しんでいただけたらと願います。
スポンサーサイト



テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


コメント
ムホォ
あの俺様だった頃の若林さんが怒らなかっただけでもすごいのに、
道案内までしちゃう彼はどれだけ岬ちゃんの可愛さに内心きゅんきゅんしていたのでしょう!!
しかも「一緒に背負うよ」の一言できっと既に心はめっちゃ軽く舞い上がりそうだったのではないでしょうか。
[2015/06/26 10:12] URL | みちんちん。 #ntbreMG6 [ 編集 ]


みち(以下略)様、コメントありがとうございます。
岬くんの可愛さと言えば国宝級ですから!
それは置いておいて、あの時の若林くんの笑顔が素敵なので、つい妄想してしまうのは仕方ありません。
Jr.ユースの若林くんも少し肩の力を抜いて欲しくて、岬くんにサービスしてもらいました。幸せを堪能すれば良いと思います♪
[2015/06/29 21:14] URL | 真 #- [ 編集 ]


コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


トラックバック
トラックバック URL
→http://sukinamono11.blog63.fc2.com/tb.php/1047-792f925c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)