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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
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トライアングル(8)
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

これまでの話
(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)

「・・・まあ、昔は周りにあまり関心がなかったからな。特に困ったこともなかったし、何でもできたし」
自分で口にしてから、若島津はあっと思った。あの、黙殺しようとしてもできない、とてつもないエネルギーを持った、日向小次郎。あの太陽のようなひとに出会わなければ、きっとそのまま如才なく過ごしていた。それに。
「岬、あの時はありがとうな。サッカーがあんなに面白いのも、日向さんのことを見てるようで見てなかったことも、あの時気がついた」
「ふふっ、それなら良かった」
あの時、がいつか言わなくても伝わる気がした。若島津の礼に岬は頷き、それから優しく微笑む。昔から可愛らしい顔をしていたが、そんなに優しく笑うとは知らなかった、と若島津は驚きのあまり一瞬鼓動が跳ね上がったに違いない胸を、ギュッと押さえた。
「じゃあもう一つだけ話すね?小次郎と昨日話したよ。チームがまとまっていないって話」
キャプテンの座を降りてから、日向がチームについて何かを発信することはなかった。
「でも、それは当然だと思う」
黙ってはいても、耳を傾けているに違いない若島津に、岬は確認すらすることなく話を続ける。
「3年前、僕と対戦することになってどう思った?それと逆、なんだよね。今まで敵だった相手と一緒にチームを作るんだから」
「でも、それだけでもないよな」
声として発せられることはなくても、響く不協和音。殴り合っても分かり合うことはできない。
「そうだね。・・・若林くんなんか3年前に対戦したきりのくせに、あんなに偉そうだし。自分より態度の大きな同い年って小次郎は初めてだと思うよ」
くすくす笑い声を立てる岬に、若島津は鋭い視線を向けた。
「岬、お前何を知ってる?」
3年間日本にいなかったくせに、何でも知っているような顔をしている。昔から、岬は何もかも見抜いていた。
「ねえ、若島津。チームの中にチームワークを乱す人がいたら僕はどうすると思う?
「そりゃ、お前のことだし、怒ってすぐやめさせるだろ」
これは自分というよりも、日向さんの意見だ。だが、今の岬と話すと、やはりそういう役割を期待せずにはいられない。そして岬自身もその期待をよく理解している。
「あのね、若島津。僕は僕の友達を信じてるよ。君や小次郎だけじゃなくて、若林くんも」
岬にとっては、今の状態は非常事態でも何でもなく、平和的に解決できることらしい。そう判断するにはそれだけの根拠があるのだろう。ならば岬を信じよう、と若島津は腹を括った。岬が煙にまくのは今に始まったことではない。
 変わったように見えても、岬は少しも変わっていない、と若島津は思った。闘志を胸に秘め、友達を大事にする岬。
「・・・お前がいるなら、日向さんの心配はやめる。その代わり、しっかり怪我を治させてもらう。あいつが何を企んでいるのかは知らんが、乗せられる気はないからな」
「うん」
何となくは分かった。怪我の具合を尋ねて来た声音がごく静かなものだったことが、それを裏付けている。
「・・・にしてもあいつ、演技下手だな」
「そうかな?」
「お前に習えば良かったのに」
「何だよ、それ。どういう意味さ」
相変わらず突き放すような口調だったが、冷たさも荒っぽさも感じなかった。
「ずいぶん可愛らしくなったもんだと思ってな」
「若島津は意地悪くなったね」
「お前の説教臭いとこは相変わらずだけどな」
言い合って笑い合う。初めて会った時には、岬とこういう間柄になることは想像しなかった。
「僕の話は終わり。今度は若島津の話を聞かせてよ」
「ああ」
小さく手を振って部屋を出た岬とほぼ入れ違いで、日向が部屋に戻って来た。
「今の今まで、岬が来てたんですよ。会いました?」
「ああ。何か楽しそうに歩いてたな。パン一人で食ったろうって怒られた」
出会い頭に怒られるのか・・・何て奴だと呆れた若島津の表情を見てとったのか、日向は愉快そうに呟く。
「岬の奴、相変わらずだな」
若島津は日向の口調につられて笑みを浮かべた。
「ええ。あいつに逆らいたくない気持ちはよおく分かりました」
若島津と岬の形、があるように日向と岬の形もある。それは日向と若島津の形とは別のところにあって、干渉することもない。むしろ、それを強くしてくれるものだ。昔そうであったように。
「でもあいつが合流してくれて良かったですね」
若島津は心からそう思った。

(つづく)

拍手ありがとうございます。
若島津くんのお誕生日が近いので、何年かぶりの続きです。
実は、リクエストが一番多かった、(そして放置期間がながかった)うちのブログの隠れた人気作品だったりします。
このパートでは岬くんが本当のことを言うかどうかで迷い、書き直しも最多。
続きはいつになるか分かりませんが、次で終わる予定です。

桐乃さま、拍手ありがとうございます。お名前のみいただきましたので、こういう形のお返事になりますが、ご容赦下さい。

今年はもう1回、更新します。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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