※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「12月21日は遠距離恋愛の日なんだってさ」 寄り道したラーメン屋さんで来生くんが雑誌を見ながら言う。大会が近くて、毎日の練習に力が入る。部活帰りのこの時間はそんな練習後の息抜きになっている。 「少し憧れるよな。強い絆で結ばれてるってことだから」 向かい側から雑誌を覗き込むのは森崎くん。同じく雑誌を覗き込んでいる僕に向けられたらしい言葉を、笑顔で流す。
何となく、ではあるけど、遠距離恋愛だけはするまいと思っていた。 物理的な距離は心の距離にもなる。手紙も受け取れなくなって、手紙も出せなくなって。忘れられてしまうことを、ずっと繰り返してきた。 傷付けて、傷付けられて、まして忘れられるくらいなら、どんなに好きになったとしても、諦められると思っていた。手を放せば良いから、とそういうことから身をかわすのも、いつの間にかうまくなっていた。 でも、そうじゃなかった。それくらいでは、逃がしてもらえなかった。向けられた強い気持ちに、強い瞳に、臆病な僕の逃げ道は失われた。隔てる距離すら、何でもないほど、信じられると思った。 「いつも一緒にいられなくても、一緒に進むことはできるだろ?お前と俺なら」 強い言葉に、そうありたいと望んだ。それくらい、好きになって、諦め切れなかったのは、僕の方だった。
「岬はどうなんだよ」 森崎くんのラーメンはなかなか出て来ない。手持ち無沙汰なのか、みんなの会話を何となく聞いていた僕に、水を向けてきた。 「遠距離恋愛はしたくないかな」 笑いながら答える。でも、心の中で付け加える。 今でも、遠距離恋愛はしたくない。でも、後悔はしていない。こうして考えるだけで、胸の中に温かいものが満ちる。出会わなければ、知りえなかった思いだった。
たとえ遠くても、君となら。
口元に浮かびかけた笑みを隠すように、頬に手を当てた。
最後に触れたのはいつだったろう。
触れ合った肌に宿る熱を思い出して、顔が熱くなる。
「岬、どうかした?」 「あ・・・あのさ、今日って回文の日でもあるんだって。1221だから」 大きく手を振って、考え事を追い払う。さっき覗き込んだ雑誌の端の記事をとっさに思い出してごまかす。 「上から読んでも下から読んでも同じって奴だよな?」 井沢が僕の指差した記事を斜め読みしたかと思うと、ふふっと笑った。 「猿さ、とか」 「何で俺の方見てんだよ!」 大声を出す石崎くんに、みんなが笑い出す。何とかごまかせたらしいことを悟り、やっと出て来たラーメンを食べ始める。帰ったら電話をする。決心に満ちた顔でラーメンを食べてしまったことは、秘密にしておくけれど。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 雑誌で「今日は何の日」という記事を見かけ、つい衝動的に書いてしまいました。 遠距離恋愛に対して否定的であろう岬くんを口説き落とすのは至難の業だと思います。でも口説き落して、口説き落とされてください。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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