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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
2-1:真っ先に伝えたい
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

お題「恋のはじまり」。お題はTOYさまよりお借りしました。


 岬が会いに来てくれた。

 3年前の夏、岬は一緒に戦った仲間だった。


 もし岬がいなければ、翼と同じチームで戦おうとは思わなかったに違いない。水も漏らさぬようなコンビプレー。初見でそれをやってのけた二人には感銘を受けた。
 もし岬がいなければ、全国大会優勝は不可能だっただろう。直接目に見えるプレーだけでなく、岬はチームを支える心だった。優しく心の強い岬がいなければ、チームはバラバラになっていたかも知れない。

 岬ほど、運命とか奇跡とかいう、俺がいつもなら笑ってしまうような、敬虔な言葉を感じさせる奴はいない。

 3年ぶりに会った岬は随分大人になっていた。元々翼と一緒にいた印象が強くて、もっと小さいように思い込んでいた。だからこそ、時々垣間見える大人っぽい表情や考え方にはインパクトがあった。背も伸びた岬は、それでも俺と同い年には見えないが。
 そして、想像していたよりもきれいになった、と思った。・・・何度も思い出した相手だった。

 3年前の決勝戦、ゴールを守り通してくれた岬を助け起こしに行った。勝利を告げる俺に、岬はその瞬間に顔を上げて微笑んだ。可愛らしい顔は泥と血に汚れ、肌の白さが際立って見えた。まだ戦いの光を残したままの目は、その一瞬に和らいだ。

 その時、初めて岬の顔を見たような気がした。無邪気で甘い笑顔を向けられて、すぐには声も出なかった。

 その顔を思い出す度に、胸が苦しくなった。それでも、時々思い出しては、会いたいと思った。


 ただ、それをにおわせても岬は信じなかった。
「・・・よく覚えてるね」
フェイントを褒めた俺に、岬はいかにも驚いたように声を上げる。よっぽど意外だったらしい。確かに、親しくはなかった。でも親しくなりたいと思っていた。
「当然だろ。ずっと見てたから」
岬は翼に比べてもパワーが足りなかった。その分、何でも器用にこなした。スタミナがない訳ではないが、その上更に力の抜き具合が巧かった。ひょい、と軽いフェイントはこっちでもカルツ位しか見たことがない。決して華麗ではないが、堅実で無駄のないプレーをする。その上にパスセンスが付くのだ。独学にしても、なかなかのものだ。俺が褒めたのも世辞のつもりはない。

「岬」
言おうかと思った。プロを目指せ、と。だが、サッカーの話を始めた時の不安そうな表情を思い出した。翼の話をした時の、どこか困ったような顔に、触れて欲しくないのだと感じた。
 岬は複雑な家庭事情を抱えている。だが、それ以上にずっと揺らぐ自分に戸惑っている。根無し草の自分に自信がない、父親まで自分を捨てるのが怖い。ひとりになりたくない。話を聞いていて、そんな幻聴を聞いた気がした。
 そして俺は口に出しかけた言葉を飲み込む。

「でも、良かった」
「何が?」
その代わりに口にした言葉に、岬は不思議そうに聞き返す。その細い体をきつく抱きしめた。

 でも、お前は俺に会いに来てくれた。

「どうしてるか心配してたんだぜ」
強いと思っていたお前の弱さに、どうしても守ってやりたいと思った。
「・・・気にかけてくれてたんだ」
岬が小さな声で尋ねる。
「当たり前だろ」
3年間思い出した。考えもしていた。だが、そのことすらこの一瞬に塗り替えられる。だから、真っ先に伝えたいと思った。
「会いたかったぜ」
岬は一瞬、身を竦ませ、そして顔を上げた。愛想よく笑いながらも、俺の腕を掴む手に必要以上に力がこもっている。

 ずっと会いたかった。

 でも、会いたかったのはきっと俺だけじゃない。

 岬を抱きしめる腕を強くして、どうしても捕まえたい、そう思った。岬との二度目の夏。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
ここから4話若林くんヴィジョンです。

一応、キリ番を設定しており、先日110,000のキリ番をみちんこ様が踏んでくださいました。
今までもリンク先さまやよくコメントを下さる方が踏んでいるような印象があったのですが、どうもキリ番を踏んで、スルーされていることも多いようです。それを考えると、比較的申告をいただけているのは幸せなのだと思います。
みちんこ様、リクエストありがとうございます。力不足ですが、頑張ります。

そして、いつもご訪問下さる皆様、ありがとうございます。
何度も中断しながらも、おかげでまだ続けられております。
感謝しきれません。

ちなみに次のキリ番は、111,111です。大体忘れたころに踏んでいただいて、わたわたする感じです。
源岬リクエストしか受け付けない、心の狭いブログですが、今後ともよろしくお願いいたします。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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