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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
1-4:温もりに泣きたくなった
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

お題「恋のはじまり」。お題はTOY様よりお借りしました。

 約束通り、若林くんを訪問した。休みに合わせて行ったこともあって、若林くんは歓迎してくれた。
「来てくれて嬉しいぜ」
そう言ってくれる若林くんに、何時間もかけて来て良かったと思った。若林くんは、思ってもないことを言う人ではない。それは今でも変わっていないらしく、ファンに対しても困る要求ははっきり断っていた。
「こういうのを率直に言って良いのは、俺の性に合ってて楽だな」
そういう気性の若林くんだから、いつもその言葉は信じられると思う。
「ありがとう。お休みなのにゴメンね」
「休みの日に来てくれって誘ったの俺だしな。さあ、行こうぜ」
若林くんの案内でハンブルクの観光に行く。
「僕、観光旅行って初めてだよ」
「そうなのか?じゃあ、ガイド頑張らないとな」
若林くんの楽しそうな声に安心する。
 今まで、引っ越しをする度に、町を案内する、と友達は言った。その度に僕は横に首を振って来た。いつまでいるか分からない。生活に使う場所さえ知っていれば十分だった。荷物を増やさないこと、欲しいものを増やさないこと…心残りを増やさないこと。僕の学んだことだった。
 それでも、若林くんのツアーは魅力的だった。
「俺の町を、岬にも知ってほしくて」
結局若林くんの言葉に胸を打たれ、僕は若林くんの隣を歩く。
「パリとは随分違うみたい」
雰囲気も、町並みも、食べ物の匂いも違う。見るもの全部興味深く思えるのは、きっと君の住む町だから。自慢気な顔で若林くんは僕を振り返る。
「そうか。じゃあ、次は岬がパリを案内してくれよ」
いかにも楽しそうな様子に、若林くんと一緒ならどこでも楽しそうな気がした。

 駅に降り立つともう夕方だった。家路を急ぐ人の群れがホームを埋める。はぐれないように手を伸ばした。でも、あとほんの少し、というところで手は届かなかった。
「若林くんっ!」
思わず叫んだ僕に気付いて、若林くんはすぐに振り返った。
「岬?」
若林くんは人をかきわけると、伸ばしたままの手を掴んだ。そのまま引っ張られたところを横合いから押されて、体が傾く。

「あっ」
僕は僕で足を突っ張った。バランス感覚は悪くないつもりだ。そして、若林くんは僕の方へ手を伸ばした。

 一瞬後、僕は若林くんの腕の中にいた。若林くんは僕を受け止めるつもりで身を乗り出したらしく、腕には力がこもっていた。何とか倒れずに済んだことに安堵した途端、僕は若林くんの腕を意識した。
「大丈夫か、岬?」
肩に回された指先が、一瞬痛いほど食い込んだ。それだけ力を入れて、若林くんは僕を守ってくれた。

 触れている部分に熱を感じる。それは僕の心を溶かしてしまう熱で、与えられた温もりに、僕は泣きたくなった。

 一緒にいたのは、ほんのひと夏。それと再会してから、ほんの少し。

 ほとんど話したことすらない。

 なのに、どうして?

「うん、大丈夫」
大事そうに抱いてくれている腕に、縋りつきたい気持ちを封じて、笑顔で見上げた。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
なかなか忙しいですが、とりあえず。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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