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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
1-3:言われて浮かんだのはあの顔
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

お題「恋のはじまり」。お題はTOY様よりお借りしました。


「週末どこ行ってたんだよ」
いつものように学校に行くなり、クラスメートの田中くんに尋ねられた。
「あ、ゴメン。ちょっと出かけてた」
僕が出かけている間に友達が来てくれたことは、父さんから聞いていた。日本人だと聞いていたので、田中くんだろうと思ったのも正解だったようだ。たぶん、サッカーのお誘いだったんだろう。
「買い物とか?」
「友達のところにサッカーしに行ったんだよ」
軽く答える。僕が草サッカーの助っ人でよく出かけるのは友達のみんなが知っている。いつもは事前に話すんだけど。
「勝った?」
いつもの通り、聞かれた。まあ、草サッカーの助っ人に行くのはたいてい試合の日だ。そう聞かれるのは不思議でも何でもないのに、少し困った。

 負けたとは思わない。若林くんは会いたかった、ともまた会いたいとも言ってくれた。勝った、とは言えない。自分の気持ちを確認してしまうことになった。
「引き分け、かな」
「何だよ、それ」
さりげなく答えたつもりだったけれど、田中くんは僕の顔を覗き込んだ。
「でも良いことあったみたいだな」
良いこと、か。そう言われて思い浮かんだのは、別れ際、駅まで見送ってくれた若林くんの顔。


 何回も引っ越しをして、昔は友達に見送られたこともあった。友達の泣き顔を見るのも泣き顔を見られるのも嫌で、見送られるのは苦手だった。だから、見送りされないように、嘘の出発日を教えるくせがついた。
 だから、若林くんが駅まで見送ると言い出した時も、僕は当然断った。
「駅の近くに旨いパン売ってる店あるからさ。連れて行ってやるよ」
若林くんはそう言うと、僕の返事も聞かずに歩き出した。
 若林くんの教えてくれたお店のパンは本当においしくて、さすがに地元って感じだった。近くを回って、父さんへのお土産も見繕ってもらった。それから駅に向かう時も若林くんは当然ついてきたけれど、僕はもう断らなかった。それよりも、少しでも一緒にいたいという気持ちが上回っていた。

 ドイツの電車は改札がないから、と若林くんはホームまで来てくれた。
「次はいつ来る?」
次の約束はしていない。それなのに、まるで確定事項のように言う若林くんに、つい笑わずにいられなかった。若林くんは僕を見下ろすと、僕の頭に手を乗せた。
「やっと笑ったな」
人に頭を撫でられたことなんて、ほとんどなかった。大きな掌の暖かさに、緊張が溶けていくのを感じる。
 見上げた若林くんは優しく笑っていて、別れの辛さも寂しさも忘れて、会えて良かったと思った。
「また、来るよ」
笑顔につられて口にした僕に、若林くんも嬉しそうに笑ってくれた。若林くんも同じように思ってくれていたら良いんだけど。
「待ってるからな。絶対電話しろよ」


 心に焼き付いた笑顔を思い出して、僕は頷いた。
「また時々出かけるから、家に来る時は事前に連絡してね」
僕の言葉に、田中くんは意味ありげな微笑を浮かべる。
「・・・友達、ねえ」
からかうような口調を笑顔でかわした。次はいつにするか決めてはいないけれど、また会いたいな、と思った。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
LINEスタンプ、入手してしまいました。
送る相手がいないので、一人でによによしています。
一緒に購入した「北○の拳イチゴ味」は割とよく使っているのですが・・・。
世代的に知っている人じゃないと面白くないだろうと思うと使えません。
知っている人だと、買った意図を勘ぐられそうで使えません。
ああ。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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