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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
1-1:やけに格好良く見えた
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

ネタがなくなって来たので、今日はお題「恋のはじまり」。お題はTOY様よりお借りしました。

 雑誌で見た時にもドキッとした。どうしたの、と聞く友達の田中くんに、旧知の相手を見たから、と理由をつけて、僕はそれを単なる情報のように装った。雑誌も、学校からの帰り道にわざわざ買った。
 それでも、単なる情報として消費しなかった証拠に、それからそう経たない内に、僕はハンブルクに行ってしまった。
 よく考えると、独りで電車に乗り、長距離を移動するのは初めてだ。

 それくらい、すごいインパクトだった。記事の中で笑う若林くんは。PSGのジュニアチームとの交流戦で活躍したという記事に、写真まで載ってるんだから、とその試合を活躍を見逃したことを悔やむ。
 不意打ちに会いに行ってどうする、という迷いがない訳ではない。突然行ったら迷惑だろうな、とも思わなくはない 。でもそんな考えが湧いて来たのは、国境を越えてからだった。

 若林くんのプレーを見たい。3年前でもすでにすごかった。全国を回って、年上のプレーも散々見て来たはずの僕が、修哲での試合では驚き、冷静ではいられなかった。
 同じチームになってからも、若林くんはぐんぐん変わっていった。個人的なセービングもさることながら、あんなに的確にバックスに指示を与えられるキーパーは珍しい。判断力も決断力も飛び抜けていて、その成長を身近に見られたのは、幸せだった。
 若林くんがいる試合は安定感がすごい。背後からの視線は、味方全体を冷静に見ていて、心強かった。同じチームでプレイ出来て、本当に良かった。
 あれから3年。若林くんはもっとすごくなっているはずだと思うとたまらなくなった。
 そりゃ、翼くんも成長しているに違いない。だけど、見たくはなかった。僕が足踏みしていることを、知られたくはなかった。
 若林くんは、それほど僕に関心がなかったと思う。翼くんのパートナーとしての僕は気になっても、僕自身に対する関心があったようには思えない。とりわけ話したこともなかったし。
 だから、僕がチームに入らず草サッカーだけしていることも見過ごしてくれると思っていた。下手したら僕のことなんか覚えていないかも知れない。それはそれで良いけど。とにかく僕が心配していたのは、若林くんの邪魔にならないか、ただそれだけ。

 でも、予想は大きく裏切られることになる。それも良い意味で。若林くんは草サッカーをしていると言った僕を馬鹿にしたりはせず、一緒にサッカーをしてくれた。
「すごいな、岬。フランスの草サッカーレベル高すぎだろ」
そう言って、若林くんは僕の使ったテクニックをいちいち褒めてくれた。さすがによく見ている。額面通りに受け取れるほど無邪気でもない。頭の中で割り引いて、それでも余る賞賛に、面映ゆくなる。・・・僕にはそんな資格はないのに。
「まあ、岬は昔から上手かったよな。フェイントなんかはすごかった」
「・・・よく覚えてるね」
今はフェイントは使わなかったのに。当たり前のように話す若林くんに、思わず感嘆の声を上げた。
「当然だろ。ずっと見てたから」
人懐っこい笑顔に、目を奪われた。僕の方が忘れていた。若林くんが、こんなに優しく笑うこと。
「岬」
その顔で見つめられた。特徴的な、意志の塊みたいな双眸が今日は優しく見えている。
「でも、良かった」
「何が?」
聞き返した瞬間、きつく抱きしめられた。同い年とは思えないほど逞しい胸が、僕をやすやすと包んでしまう。
「どうしてるか心配してたんだぜ」
優しい声だった。若林くんは毅然とした印象の方が強いから、思いがけず優しい口調に胸を打たれた。若林くんの良いところの一つ。ちゃんと人を見ていること。自分に自信もあるけど、他の人を認められる懐の広さと度量があるから、偉そうに見えても、若林くんの周りには人が絶えなかった。
「・・・気にかけてくれてたんだ」
「当たり前だろ」
言い切る若林くんに、僕は思わず顔を伏せた。心のどこかが急に暖かくなる。そして痛くなる。

 どうしても会いたかった。思い出して欲しかった。

 いつもはほとんど話したこともないのに、あの時僕を迎えに来てくれた。痛そうな足を引きずりながら、僕を助け起こしてくれた。あの時、差し出された手に必死で手を伸ばした。僕に勝利を告げる声はとても優しかった。やけに格好良く見えた。

 きっとあの時から、僕は。

「会いたかったぜ」
そんな言葉に、心は躍る。・・・本当は僕だって、君と仲良くなりたかったと気付かされた。
「それなら良かった」
何気ない様子を装って答える。向けられる笑顔に、また鼓動が激しくなった。


(おわり)

拍手ありがとうございます。
3月忙しいです。5月までに手が空くことを祈ろう。

DRAGON PUNCHER さまと相互リンクをさせていただきました。
源岬愛にあふれたお洒落ブログで、時々お邪魔させていただいていたのですが、この度晴れて相互リンクをさせていただくことになりました。情報も豊富で、行くたびに楽しませていただいています。
あと、先日のオンリーにも出られたそうで、通販もされています。オフライン!
源岬という小さなフィールドに新しい方が増えるのは本当に嬉しいことです。
錆吉さま、今後ともよろしくお願いいたします。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


コメント
こんにちわー。
どもどもこちらこそよろしくお願いいたします。
真さまのブログは源岬はまってからずっと読ませていただいておりましたので
すごい嬉しいです!v-14ユウキダシテ ヨカタ!!

今回のお話も素直な態度で接してくれる若林さんに
知らずのうちにバリア張ってた岬ちゃんの心がどんどん解れて
本心があらわになってく様がとても初々しくて可愛くて
抱きしめたくなります。色んな意味で。
こういう甘酸っぱさが源岬の醍醐味だと改めて思いました。
[2015/03/31 11:04] URL | 錆吉んこ みtinこ。 #ntbreMG6 [ 編集 ]

Re: こんにちわー。
錆吉さま、いらっしゃいませ。
コメントありがとうございます。
ずっと読んでくださっているとのことで、こちらこそ嬉しいです。

しかも素敵な解説をありがとうございます!
そんな素敵な話だっただろうか、と読み返してしまいました。(ガッカリしました)
岬くんの無理している部分に気付けて、しかも包んであげられるのは若林くんだけ!
幸せになってほしいものです。
[2015/04/02 00:49] URL | 真          #- [ 編集 ]


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