※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「あれ、今日ってハロウィンだったっけ?」
若林くんの家には二つのカレンダーが置いてある。ドイツ語版と日本語版。日本語版は毎年実家から送られてくるらしい。 「一応、日本人としての感覚も失って欲しくないらしい」 苦笑交じりに、それでも二つのカレンダーを並べている辺り、若林くんらしい。
懐かしくてじっくり見た日本語版に「ハロウィン」の文字を見つけた。日本でも最近ハロウィンが定着しつつあると聞いて、どこの国も同じだと実感する。 「フランスも最近はハロウィンするんだって。明日の方が主流だけど」 「こっちもAllerheiligenだからな」 若林くんはスラスラ言ったけど、すぐには聞き取れなかった。ドイツ語版のカレンダーで確認する。まあ、見てもわからないけど。ちなみに明日11月1日はフランスではToussaintで、「諸聖人の日」だ。すべての聖人や殉教者を祀る日なんだとか。 だから、元々ハロウィンなんて風習はなかった・・・らしいんだけど、最近は少しずつ見かけるようになってきている。
去年までは僕もその程度の認識だった。それが変わったのが去年。日本人学校の仲間にお父さんが転勤族って友達がいて、アメリカの風習を持ち込んだものだから、パーティーやら仮装やら、盛大に巻き込まれた。 「去年はカボチャくり抜いて、ランタン作ったり、お化けに変装したりしたよ」 「へえ」 軽く話したけど、まあ大変だった。悪ふざけした友達が学校の外に出ると言い出して、阻止したり、とか。
「どんなことするんだ?」 若林くんは興味深そうだ。そりゃ、僕も去年聞いた時には興味が湧いた。その後熱は冷めたけど。 「お化けに変装して、お菓子くれないといたずらするぞ、って言ってさ・・・」 確かそんな言葉だったような。記憶をたどりながら口にした僕に、若林くんがふと真顔になった。 「俺、お菓子持ってねえけど、岬にいたずらされるのか?」 真面目な顔をして、そんなこと言うんだもん。何だよ、それ。 「僕、いたずらなんかしないよ」 心外だ。確かに僕は子供っぽい顔をしている。背もそれほど高いわけでもないし、声なんかまだ「アルト」とか言われて大いに傷ついている。でも、中身はそれなりに大人だと自負しているんだけれど。 第一、そんなこと言う若林くんの方が子供っぽいと思う。だって今だって手を差し出して・・・。 「お菓子くれないといたずらするぞ、だな?」 顔も声も雰囲気も大人っぽいくせに何言ってるんだか。吹き出しかけた僕に、若林くんはもう一度同じセリフを繰り返す。 「ごめん、今日は持って来てないよ」 仕方なく、合わせてみた。若林くんはにっこり笑うと、手をさらに伸ばした。 「じゃあ、仕方ないな。俺はいたずらするぞ」 「えっ?」 聞き返した僕に向けられた笑顔は、本当に楽しそうだったけれど、子供のそれでは決してなかった。
(一巻の終わり)
拍手ありがとうございます。休みなので、更新。 ハロウィンネタ、割と何度も書いています。 特に好きというわけでもないのですが、この時期は橙色が街に溢れ、我知らず浮かれているようです。・・・ってそれを好きと言うんですね。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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