※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 1
俺のチームメイトで、岬とも面識のある同い年の一人に彼女ができた、という流れから、話は脇道に逸れた。どちらともなく、好きな人の話になったところで、岬が言った。 「まだ好きな人なんていないよ」 言った岬のひどく赤くなった顔を見て、真実はその逆なのだと確信した。 そして、何故か腹を立てている自分に気付いた。この優しい面立ちの岬は、基本人付き合いが良いくせに、小学生時代には俺とはそんなに親しくなかった。だから、突然会いに来てくれた時は本当に嬉しかったものだ。それだけに、岬の反応には冷水を浴びせられたような気がして、浮かれた自分が滑稽にさえ思えた。
そして気がつくと、俺は衝動的にとんでもないことを口走っていた。 「俺、好きな相手がいてな。なあ、岬、練習相手になってくれないか?」 岬が断ったりしないのは経験上分かっていた。そもそもその話を始めたきっかけのチームメイト、というのが誰にでも恋愛相談を持ちかける奴で、会ったばかりの、それこそその辺りの女の子を束にしても敵わないような可愛い岬に、恋愛相談を始めたのだった。気付いた俺が止めるまで、岬はドイツ語もよく分からないまま、おとなしく彼の話を聞いていた。 そんな岬が、それよりは親しい俺の相談を断るとは思えなかった。 「え・・・でも」 口ごもった岬の顔を覗き込む。大きい目、長い睫毛。ふっくらした唇。どこをとっても甘そうに見える顔に、心を奪った相手、は想像できなかった。 「頼む」 岬は一瞬目を閉じ、唇を結んでから、何か考えているかのような表情で目を開けた。 「・・・分かった」
その表情を見た瞬間、実感する。俺が好きなのはこいつ、岬なんだと。
小学生時代、ほんの短い間チームメイトで、南葛市を去るまでの間に、全国大会を共に戦った仲間である岬は、ある日突然俺を訪れた。そう親しかった訳ではない、短期間の仲間は何故か忘れられなかった。・・・忘れられる訳がない。あの翼がコンビを組んだのは、普段はおとなしくて、でもとびきり可愛い顔をしておきながら、サッカーはうまくて、気は強くて・・・印象的な転校生だったのだ。 そして、久しぶりに話して思い出した。岬は、ふと気づくと寂しげにしているかと思えば、見たこともないような可愛い顔で笑うのだということを。
それから、岬は時々ドイツに遊びに来た。日本の話もしたし、サッカーもした。他に日本人の友達がいない訳ではないが、気のおけない友達、という意味では、岬といるのは楽しかった。
一度発した言葉は取り返せない。好きな奴はお前だ、と言えば良かったと思ったものの、さっき岬が顔を赤く染めていたことを思い出した。恥ずかしそうに頬を押さえて、赤く色づいた顔を隠していた岬は、本当に可愛かった。・・・憎らしいほどに。
(つづく)
拍手ありがとうございます。 今年も残り少なくなったので、4回位のSS+年末更新位にしようかと思っています。 計画的に。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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