※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 3
「俺、好きな奴がいるから、ごめんな」 頭を下げる若林くんの顔を見つめながら、頬を伝う涙の感触に気づく。それなのに、嬉しくて舞い上がりそうだった。 「そいつが、何か君に似てる気がして。いや、俺と同じ日本人だから、髪とか黒いんだけど、でも何故か似てる気がしたんだ。君とは全然違うタイプだけど、可愛くて、守ってやりたくて・・・って俺何言ってるのか分からねえな」 泣き出したのに驚いたのか、若林くんは饒舌に釈明をする。若林くんの説明は本人の言う通り、全然分からないけど、心の中に暖かいものが広がる。流す涙に疑念とか臆病さが溶けていくようだった。 「ありがとう」 素早く立ち上がって、ハンカチを押し付けた。もう眩暈はしない。おしゃれな靴に、可愛いワンピースで走れるのかは怖いけど、そのまま駆け出す。胸を打つ心臓の音が早いのは、走って苦しいだけじゃない。甘くて締め付けられるような感情が、鼓動を早めてしまうみたいだ。今まで抑えていた気持ちが、全身にまわって、暴れている。
「じゃあ、ばいばい」 陰に隠れるように入った路地で、息をつく。別れの言葉を口にした瞬間、僕の意識は途絶えた。
「どうじゃった?」 頭の中に声が響く。あのおじいさんだ。他に言いたいことも少しはあったけど、一番にお礼を言った。 「ありがとうございます」 「願いはかなったかの?」 おじいさんの問い掛けに、少し考える。完全に不安が消えることはなくても、進む勇気は出た。 「はい、たぶん」 「たぶん、は頼りない気がするのう」 そんな会話をした。残響が途切れても、笑い声は残っている気がする。おじいさんが闇に消えていくのを見守りながら、僕は目覚めた。
「あれ、ここは?」 僕は商店街の入口に立っていた。文字盤が銀色のいつもの腕時計で時間を確認して、それほど時間が経っていないことを知る。晩御飯の買い物をしないと、と我に返り、それから足を止めた。頬に風が当たり、少し冷えたと感じたのは。
泣いてた?僕?
頬に手を当てると、少し熱くなっている。涙の跡の一筋は冷たくて、あのハンカチの冷たさを思い出した。
家に戻ってから、若林くんに電話をかけた。 「岬!聞いてくれよ」 「あ、若林くん。あの・・・」 「さっき、天使に会ったんだぜ!目の前で消えてびっくりしたぜ」 「僕もさっき神様に会ったよ。今度、話してあげる」 「神様!?」 「ねえ、いつが良い?」 今まで、誘ってくれるのは若林くんだった。1週間前には次の約束もせずにいた。自分から、いつ、と口にした僕に、電話の向こうの若林くんが息を飲む音が聞こえた。 「本当に、来るのか?」 再度尋ねられて、若林くんの戸惑いを感じた。自分を守りたい一心で傷つけてしまったのかも知れないと、改めて思った。だから、心を込めて囁く。 「うん。会いに行く。できるだけ早くに行くね」
この気持ちが変わらないうちに。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 何を考えて書き始めた話なのか覚えてもいないのですが、暑い日に書き始めたのは明白。 来週東京に遊びに行きます。お伴というか子守なので、そう自由時間はないのですが・・・それまでに体調を戻さないと。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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