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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
諍い(3)
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。
今回で終わり。


「何だ、話って?」
練習の後、夕食が終わっても若林は不機嫌そうだった。紅白戦で見事にしてやられたのが不満らしい。その後岬が松山、若島津と順番に抱きつかれたのも。さすがに佐野にまでは怒っていないだろうが。もっとも若島津程虎の尾を踏むのが得意な人間はいない。話があるから、部屋まで来いと一方的に告げると、踵を返した。その華麗な仕草、平然とした振舞に「被害者の会」が沸き立ったのは言うまでもない。

 呼び出された若林は、といえば怪訝そのものの表情で現れた。どちらかが引退しない限り、代表に招聘されない限り、ポジション争いが途絶えることはない二人だが、さすがに何年も顔を合わせていると、会話くらいは交わすようになる。むしろ、チーム内でも落ち着きのあることでは定評のある二人であり、サッカーの話さえしなければ、会話は弾んだ。だが、部屋に招かれるほど親しくもなければ、特に用事もないはずだと若林が首を傾げるのはもっともだった。
 若島津はしかめっつらの若林を前に一通り分析した後、腰掛けていたベッドから立ち上がった。
「話があるのは、俺じゃなくて、こいつな」
若島津の陰になるように座っていた岬が顔を上げる。若島津は、一瞬目を見開いた若林を気にした様子もなく立ち上がる。傍らの岬を見下ろし、優しく微笑む。
「何かあれば呼んでくれ。隣にいるから」
「うん」

 若島津が部屋を出ると、残りは二人。岬は部屋の隅にあるパイプ椅子を出した。無言で組み立てて座るよう促す岬に、若林は眉間に皺を寄せた顔のまま腰をおろした。
「若島津から、悪影響があるから仲直りしろってさ」
そのまま自分はベッドの端に腰掛ける。この合宿に参加してから初めての会話、にしては落ち着き払った様子で岬は言った。
「そうか」
若林はできるだけ不機嫌な声を作る。が、次の瞬間慌てた。ベッドの端に座った岬が身を屈めて覗き込んでいたためだ。
「な、何だ」
「そんなに不機嫌そうな顔なのかと思って」
自分に対してこんなことをしてくるのは、翼と岬だけだろうと思い、若林はその連想につい笑ってしまったことに気付く。まあ、変な連想がなくとも、覗き込んでくる岬の様子は可愛らしく、釣られて笑っていたに違いないのだが。岬はマイペースだ。テリトリーに踏み込まれるのは嫌がるくせに、時々自分から人のテリトリーに笑顔で侵入して、相手のペースを奪ってしまう。それが許されるのも岬の個性である。
「今日は奇襲に弱い日みたいだね」
二度目の奇襲を成功させた岬があまりに嬉しそうに笑うのを、若林は静かに見ていた。今日一日岬の方を見ないようにしていた。自分とは距離を置いている岬が、他の誰かと仲良くしている姿など見たくなかった。
 それが、目の前で笑っている。いつも喧嘩をしても、謝るのは若林の方だ。それが、今日は合宿中だとはいえ、これだけ譲歩してくれた。・・・翼と仲の良い様子に嫉妬しただけに過ぎないのに。
「お前がいないからだろ」
ボソッと返された言葉に、岬が首を傾げた。その口調が寂しそうにも拗ねたようにも聞 こえてしまって、岬は若林の頭に手を置く。いつもは庇護者のように振舞いながら、若林が時々見せる弱みに岬は弱い。そうでなくても、惚れた弱みを十分に自覚してもいる。
「じゃあ、この部屋に来る?一人部屋なんだけど」
あくまで普段通りの口調を装う岬に、二人なのだからそんなに恥ずかしがらなくても良い、とは思う。それでも、ほんのり赤く染まった頬は可愛く、若林の気持ちを動かすのに十分だった。
「じゃあ、今すぐでも良いな?」
早速手を握りながら、若林は歌うように告げる。足取りも軽く、羽が生えたかのようなステップに、岬は口をおさえて笑った。

 その後しばらく、翌日ゲッソリした顔で食堂に現れた若島津が、石崎に部屋を替われと迫ったり、若島津と同室になった森崎が眠れなかったと泣いたり、結局三杉が部屋を交代して、若島津が一人部屋になったりした。
 その調整に当たったのは、上機嫌の若林だった。

(おわる)

拍手ありがとうございます。
喧嘩をする二人、がテーマでしたが・・・うーん。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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