※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「反町、出かけなくて良いのか?」 若島津が尋ねたのも無理はない。さっき反町はこれからアルバイトだと言ったにも関わらず、ベッドに寝転がっている。 「大丈夫だぜ。俺のアルバイトはこれだから」 反町が見せたのは、スマートフォンの画面だった。 「攻略-テスト版-?」 「そう。ゲームのテスターやってるんだ」 そう聞いても、若島津は訝しげだ。反町がゲームが得意だとは聞いたことがない。スマホゲームも、電池が切れるからやりたくないとか言っている位で、松木や小池の方がよほど得意だろう。 「お前がゲームって珍しいな」 そこで聞いてしまったことを、後々まで後悔することになるとは、その時の若島津には思いもよらないことだった。とにかく若島津は禁断の扉に触れてしまったのだ。 「これな、三杉が作った恋愛シミュレーションゲームなんだぜ」 「はあ?」 訳が分からず聞き返した若島津に、反町は丁寧にも再度繰り返し、それから説明を始めた。 「何か、三杉がゲームを作ってみるとかで、若林がスポンサーになって、森崎をスーパーバイザーにゲームを開発中でさ」 若林に森崎という、同い年で切磋琢磨するゴールキーパー達の名前に、若島津はどんどん微妙な表情になっていった。 「まさか、若林になって岬を攻略したりするのか?」 「それもできるぜ」 恐る恐る尋ねた若島津だったが、反町の答えはその上をいくものだった。 「プレイヤーになれるキャラは他にも10人位いて、攻略対象キャラはその倍はいる」 聞かなければ良かったと思う若島津に、反町は水を得た魚のように嬉々として語り始める。 「まあ、最初に選ぶキャラによって、シナリオは大分変わるんだけどな。若林の場合は最初から修哲トリオと森崎を侍らせてるし」 森崎は一体何を作ってるんだと若島津は思った。あまりにもひどい。 「それで、最初のライバルキャラで翼と石崎が出て来るから、そっちを落としても良いし、道で飛んで来るボールをキャッチしたら、岬が登場して来るし」 「岬の登場の仕方おかしくないか?」 「それが、本当にそんな出会いだったらしいぜ。若林がボールをキャッチしたら、岬が蹴ったボールだったらしくて」 「…どこのときメモだ」 「そうだよな。三杉もすごい表情してた。それで登場する岬のエフェクトが重くて、よく画面が固まるんだよな」 横から覗き込むテスト画面は、ほとんどが黒地にテキストのみであるのに対し、少女マンガ風に描かれた上に、花を背負って登場した岬画面は確かにキラキラだった。 「…すごいな」 つい声を出してしまった若島津だったが、そこで終わるはずもない。 「それで、全国大会に出て来てからは、若島津も攻略できるようになるんだぜ」 テキスト画面を見せられて、無言でスマホを奪おうとする若島津に、口を滑らせた反町は必死でガードする。 「…貸せ」 「スマホ壊すつもりだろ!怖いわ!!」 野生の空手家に戻っている若島津に、ジリジリと後退ずさりながら、反町はスマホを守る。最近入手したばかりの隣の女子高生の電話番号は死守する必要がある。…サンプルをダウンロードしただけで、オリジナルデータは他にあると言っても、耳を貸してもらえまいと反町はよく分かっている。 「といっても、あくまで岬イベントがメインだからな。小学生の時に、他の奴に声をかけず、肩を貸したり親切にしていたら、岬が会いに来るんだぜ!」 あくまで岬イベントがメインだと言い張り、反町はドイツに来た岬の画面を見せる。 「…すごいな」 「逆光で現れて、笑顔になった途端、画面中花だらけだぞ!お前なんか、若島津の好感度が1上がった、とかメッセージが流れるだけだぞ」 「…それはそれで腹立つな」 若島津は苦笑いしながら、反町の見せる画面を見る。岬はキラキラを背景に、ニコニコ微笑んでいる。 「岬のイベントは他にもあって、ドイツでの試合観戦なんか、完全にデートだぞ。全部実際あったことってすげえよな」 「…何でそれで付き合ってないんだ、あいつらは」 岬と付き合いさえすれば、若林もこんなものに金を出すことはないだろう、と若島津は嘆息した。 「でもな、これ見てたら、岬が嫌がるのも分かるぜ。修哲トリオが朝からくっついてきたり、冷たくすると拗ねたり」 「どんな小学生なんだよ…」 恐らく実際にあった若林の行状に呆れる若島津だったが、ふと思い付いて顔を上げる。 「そういえば、お前や三杉はどうなんだ」 反町や三杉が攻略できるなら面白い(プレイしようとは思わない)若島津だったが、反町は満面の笑顔である。 「俺は友人役なんだ。その手のゲームでいるだろ?情報を教えてくれる奴。残念だな、若島津に攻略して欲しかったのにな」 「うるさい」 「三杉は医者で、回復をしてくれるし、早田は道具屋だぜ。薬草から手錠まで何でも売ってる」 誰が誰に売るんだ、と思っても口が裂けても言わない若島津である。そんなことを聞こうものなら、サービス精神の塊の反町は、どのステージで誰が誰に使うのかまで、詳細に教えてくれるに違いない。賢明な若島津はそれ以上の追及を諦めた。 「それを考えたら、日向さんモードは…」 「日向さんモード!?」 うっかり口にしたことを、今度は反町が後悔してしまう程、今日一番の食いつきで若島津は顔を上げた。 「俺の魅力に気付いて、野獣と化した日向さんが、嫌がる俺を押し倒し、薄い本みたいにあんなことやこんなことを…」 それこそ何かが憑いたかのような勢いでまくし立てる若島津だが、慣れた反町にしたら、いつものことでしかない。 「日向さんモードは、日向さんが三杉に対抗するためにアルバイトして金を貯める、健全な青少年に推奨のゲームなんだぜ」 反町はあっさりと言い切り、若島津の生きる希望を奪った。実はその若島津の暴走を恐れて、日向の恋愛モードが封印されたことを、反町は知っている。 「まあ、ゲームに頼らずリアルに攻略しろ」 突っ伏した若島津の肩を叩き、反町はテスト作業に戻るのだった。
(おわり)
(おまけ)
「こうなったら、俺もそのゲームを極めてやる!」 言い出したものの、日向に合わせてガラケーユーザーの若島津にスマホが貸与された。 「反町、お前のオススメは?」 若島津の言葉に、反町がニヤニヤ笑う。
反町はあっさりと言った。アルバイトゲームの主人公でしかない日向とは違い、若島津が主人公のモードは2パターンあるらしい。 「若島津はすごいぞ。攻略可能キャラも多いし、日向さんも攻略可能だ」 「なにィ!当然、俺を押し倒してくれるんだろうな!?」 「倒すのはもう一つの方のモードだな」 若島津がキーを操作すると、トップ画面に切り替わった。 「反町!!!」 若島津はスマホを投げ出し、逃げ出した反町を追いかけた。
そのスマホの画面にはこう書かれていた。 『北斗の健』
反町はあっさり答え、トップ画面を起動させる。 「登場キャラをほとんど攻略できるんだぜ」 「ほとんどって?」 聞き返した若島津に、反町は指を折って説明する。 「まず若林は自分が攻略されるのは嫌なんだろうな、攻略される側ではまず登場しない。あと、日向さんも出て来ないし…、でも他のモードではほとんど攻略できない三杉が攻略できるんだぜ!」 聞いても嬉しくない説明に、若島津は苦虫を噛み潰して咀嚼したあげくに飲み込んだような、そんな顔をした。
反町はあっさりと言った。 「岬モードはすごいぞ。サブタイトルが『日本縦断キャプテンキラー』!」 若島津の顔から血の気が引く。岬に攻略されるキャプテン、の面子を察したためだ。 「日向さん…」 「は入ってるぜ、もちろん。若林も翼も攻略できるんだから、楽しいだろ?」 若島津の神経を逆なでして、反町は笑った。 「ちなみに、岬以外のグラフィックはほとんどない。唯一あるのは若島津で、攻略すると『お姉さま』と呼べるんだぜ」 「何でだよ!!若島津の絶叫も虚しく、ゲーム画面では高解像度グラフィックの岬が、微笑みかけていた。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 急に書きたくなって、書きました。
クラブ W杯観ていたら、お風呂に入るのが遅くなりました。延長戦までもつれ込むとは!見応えのある試合で、審判の残念さが際立ちました。 ただ、今後日本開催はないのも、とても残念です。日本開催枠を巡って、岬くんが日本編の主役で、翼くんのヨーロッパ編も交えながら…という『GOLDEN DREAM』に至る話は是非見たかったので…。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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